4月に開かれた安倍晋三後援会主催の「桜を見る会前夜祭」の収支に関する違法性が指摘されるなか、安倍首相のみならず、前夜祭の会場となった東京のホテルニューオータニも苦しい立場に追い込まれている。
通常、ニューオータニの立食パーティの最低料金はひとり1万1000円だが、安倍首相の後援者らが参加した前夜祭の会費は5000円に設定されていた。
不足分の6000円を安倍事務所が補填(ほてん)していたのなら、有権者への寄付を禁じた公職選挙法違反の疑いがあり、また前夜祭の支払いが政治資金収支報告書にまったく記載されておらず、政治資金規正法違反(不記載)も疑われる。
こうした追及に対し、安倍首相は以下のように説明した。
(1)会費5000円の価格はニューオータニが設定した。
(2)安倍事務所職員が参加者から5000円を集金し、ホテル名義の領収書を手渡し。集金した全額をその場でホテル側に渡すという形で、参加者から直接ニューオータニへの支払いがなされた。
(3)従って安倍事務所にも後援会にも一切、入金はなく出金もない。
これが真実なら一見、安倍首相は"シロ認定"となるようにも思えるが、元検事の郷原信郎(ごうはら・のぶお)弁護士はこの釈明を「最悪の一手だ」と断言する。
「公選法違反、政治資金規正法違反で攻められた絶体絶命のピンチに、安倍首相が見つけたのは『ニューオータニにすべての説明を押しつける』という方法でした。しかし、この方法を選んだことで、首相は逆に詰んでしまった。もはや"投了"しかありません」
まずポイントとなるのは、首相自身や事務所関係者のパーティ参加費の支払いだ。郷原氏が続ける。
「首相の説明どおり、ホテル側が立食参加者全員から参加費を徴収するのなら、首相や事務所関係者からも参加費を徴収しなければなりません。もし支払っていたとすれば、その支出の記載がないことは政治資金規正法違反になります。
逆に支払っていなければ、無銭飲食になってしまいます。安倍首相はもはや、『自分が違法なことをしていない』という説明をできない状況なのです」
さらに、もし支払いがなければ、ニューオータニは首相側に違法な企業団体献金(財産上の利益の供与)を行なったことになる。また、そもそもニューオータニ側から「5000円」という破格の料金設定を提示したというのが本当なら、それ自体も同じく「利益の供与」に当たる疑いがあるという。
「公職者である首相から料金を取らない、あるいは割引を行なうことは、利益供与とそれに伴う癒着、つまり贈収賄の疑いさえ生じさせる。一流ホテルとしてはコンプライアンス上、大きな問題です。疑いを晴らし、社会的信用を守るために、ニューオータニは前夜祭の収支明細などを自ら公表するべきでしょう」
ニューオータニは10月23日に開催された「首相夫妻主催晩餐会」を内閣府から1億7200万円で入札なしで受注している。これ以上の疑いをかけられないようにするためには、やはり前夜祭パーティの収支明細を公開し、自ら"シロ"を証明するしかなさそうだ。