『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、政権による"公文書抹殺"問題の解決策を提言する。

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またもや、大切な公文書が失われてしまった。安倍首相主催の「桜を見る会」の招待者名簿である。内閣府が保存していたが、担当部署が重要性の低い保存期間「1年未満」の文書扱いとして、野党議員が資料提出を求めた今年5月9日と同日にシュレッダーにかけて完全廃棄してしまったのだ。

「桜を見る会」には安倍首相が地元・山口県から支援者を大量に招待し、公費で"おもてなし"をしたのではないかという公職選挙法違反の疑惑がかかっている。しかし、招待者名簿が失われてしまったことから、その疑惑解明はなかなか進まない。

公文書は歴史の検証に欠かせない国民共通の貴重な財産であり、民主主義の基盤となる。世界の国々は公文書保存のルールを厳格に定め、日本でも2009年に「公文書管理法」が作られている。

また、18年には陸上自衛隊の日報や森友学園との財務省のやりとりの記録など、公文書の管理のあり方が議論となるケースが相次ぎ、行政文書の作成・保存基準や歴史公文書の範囲の明確化などを内容とする「ガイドライン」が改正された。

それなのに今回のような事態が起きたのは驚きではないか?

だが、私の長年の官僚生活の経験から見れば、この「ガイドライン」改正はほとんど意味がなかった。なぜなら、最も根本的な問題を放置したままだったからだ。

それは、文書を「保存するかどうか」と「いつ廃棄するか」について、国民の知らないうちに官僚が恣意(しい)的に判断する余地を大きく残したことと、ルールに違反しても大したお咎(とが)めがない仕組みになっていることだ。

そこで、この根本的な問題を解決するための試案を提示してみよう。

まず、官僚に5つの義務を課す。第一は、すべての文書、メール、電子ファイル、会議録音データをとりあえずすべて保存する義務。特に会議録などは、忙しくて作成できなかったという言い訳がされることが多いし、都合の悪いことは書かないことが常態化している。

そこで、会議を録音してそのデータに手を加えることなく保存させれば、これらの抜け道がなくなる。

次に、データを廃棄するときは必ず公告する義務、その公告に対して市民がひとりでも見たいと言えば公開する義務、それが秘密情報の場合は公開できるときまで保存する義務の3つをセットで課す。

さらに、すべての紙データを電子化する義務を課せば、すべての記録がコンピューター上になんらかの痕跡を残し、国民の見えないところで情報が隠滅されることがなくなる。

その上で、これら5つの義務違反に対して刑事罰を科すことも必須だ。これまで多くの省庁は公文書関連の不祥事に対して「内規違反」として内々の処分で済ませてきた。しかし、刑事罰なら警察や検察が捜査するため、抑止力は飛躍的に高まる。

これと併せて、保存と閲覧容易化のための予算措置を政府に義務づけることも必要だ。

安倍政権になって公文書廃棄、隠蔽(いんぺい)、改竄(かいざん)が多発し、政治ガバナンスは崩壊している。民主主義は崩壊寸前と言ってもよいだろう。

前回のガイドライン改正はただのアリバイ作りに終わった。野党は疑惑追及のパフォーマンスだけでなく、公文書管理法の抜本改正案を国会に提出して政府を追い込むべきだ。

●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中

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