「森友・加計(かけ)疑惑も安定した会見ぶりで政権の危機を見事に乗り切り、『鉄壁のスポークスマン』という印象が強かっただけに、ここまで菅長官がヨレヨレになるとは思いもしませんでした」(全国紙・官邸担当記者)
「桜を見る会」スキャンダルで連日、記者の追及を受ける菅 義偉(すが・よしひで)官房長官がポンコツ化の一途をたどっている。就任以来、7年間も大過なく一日2回の定例会見をこなしてきた長官が回答に困り、生気のない表情で立ち往生する姿が目立っているのだ。
世間が「菅さんが変?」と首をかしげたのは12月4日の会見。「桜を見る会」招待者名簿のバックアップデータをめぐる記者とのやりとりで、「ちょっとお待ちください」を連発。官僚からの差し紙(回答案を走り書きしたメモ)を受け取り、そのまま棒読みするシーンが11回も繰り返されたのだ。
「長官が差し紙を受け取る光景そのものが珍しいのに、これだけの回数を重ねたのですから、さすがに記者席もざわつきました。その後も『桜を見る会』に反社会勢力の人物が参加した疑惑に関し、12月の閣議で『(反社会勢力の)定義は困難』と決定したことへの是非を問われると、『お困りであれば、警察に相談を』と珍回答するなど、およそ菅さんらしからぬヨレヨレ会見が続いています」(官邸担当記者)
この体たらくに、菅長官の評価が急落しているのは言うまでもない。ジャーナリストの川村晃司氏が言う。
「誰もが名官房長官と思ってきたのに、追い込まれると意外にもろい。官邸記者の間では『これまでの評価が過大だった。実は大したことはないのでは?』という声も上がっているほどです。危機管理は得意という思いが強いだけに、差し紙頼りの会見を強いられている今の状況は、菅さん本人にとっても屈辱的なはず」
なぜ、こんなことになってしまったのか? 自民党関係者が官邸内の裏事情をこう明かす。
「安倍首相は『桜を見る会』のスキャンダルが持ち上がると、官邸で3回のぶら下がり会見に応じ、火消しへと動きました。この会見をセッティングしたのは今井尚哉(いまい・たかや)首相秘書官です。
ぶら下がりなら、首相が一方的に釈明できる。しかも、担当の記者は若手が中心で、厳しい質問はまず飛んでこない。今井秘書官はぶら下がり会見をすれば、首相は説明責任を果たしたと国民も評価し、スキャンダルは収まると判断したんです。ところが、首相の説明があまりにひどすぎてかえって疑惑が深まり、スキャンダルはむしろ大きくなってしまいました」
問題はこのぶら下がり会見を菅長官が事前に知らされなかったことだ。この自民党関係者は「今井秘書官ら首相周辺は、"令和おじさん"として一躍人気者になった菅長官を、4選を目指す首相のライバルになりかねないと警戒しているフシがある」と指摘する。
「そのため、首相周辺はぶら下がり会見のプランニングから菅長官を外してしまった。しかし、火消しは失敗に終わった。そこで菅長官が今度はオレの番とばかりに危機管理に乗り出し、新たな作戦を練った。それは今井秘書官とは逆に、徹底して首相を隠すというものです。
実際、その後に首相が説明の場に立ったのは2回の参院本会議だけ。本会議は一問一答形式ではないため、野党の追及は受けずに済みます。その上で臨時国会を閉会すれば、首相は逃げ切りが可能となるし、実際、そうなりました」(自民党関係者)
ただし、その代償は大きかった。政治評論家の有馬晴海(ありま・はるみ)氏が言う。
「菅さんは首相の尻拭いをするハメになってしまったんです。官房長官は一日2回の会見をこなさないといけない。メディアにすれば、この会見は、逃げた首相に代わり、政府を追及する絶好の場となる。しかも、首相の説明は矛盾が多く、突っ込みどころが満載。おかげでつじつま合わせに苦しむ菅さんの回答は迷走、評価はダダ下がりです。首相の尻拭いをさせられてヨレヨレになっている菅さんの姿を見ると、ちょっと気の毒になってしまいます」
ポスト安倍レースで大きく後れを取ってしまった菅長官の2020年はどうなる?
■『週刊プレイボーイ1-2合併号』(12月23日発売)活版特集「次期首相候補が安倍首相の尻拭いで急失速! 自民党内の"隠れ菅派"は今、何を思うのか? どうする2020年のガースー!!」より