昨年12月25日に収賄容疑で逮捕された秋元 司議員は、今年1月14日に再逮捕。ほかの議員にも疑惑が広がっている 昨年12月25日に収賄容疑で逮捕された秋元 司議員は、今年1月14日に再逮捕。ほかの議員にも疑惑が広がっている

2025年頃の開業を目指すカジノ誘致レースに異変が起きている。

昨年秋の段階で、カジノ誘致を「予定または検討」していた自治体は北海道、東京都、千葉市、横浜市、名古屋市、大阪府・市、和歌山県、長崎県の8つ。ところが、昨年末から年明けにかけて、北海道と千葉市が相次いで誘致見送りを表明したのだ。全国紙社会部デスクが解説する。

「北海道は希少な動植物の保護、千葉は台風災害の復興優先を主な理由に挙げましたが、そんな説明をまともに信じる人は誰もいない。2自治体の誘致見送り表明に、IR汚職スキャンダルの影響があるのは間違いありません」

秋元 司(つかさ)衆院議員(自民党を離党)が、中国のカジノ関連業者から賄賂を受け取ったという収賄容疑で東京地検特捜部に逮捕されたのは昨年12月25日。年明けの1月14日には、さらなる収賄容疑で再逮捕されるに至った。

「この中国業者がカジノの開業を目指していたのが北海道でした。同社は北海道比例選出の船橋利実(ふなはし・としみつ)衆院議員にも100万円を渡したと供述しており、ほかにも中国系カジノマネーが政界に流れた可能性は否定できません。

また、千葉市については、熊谷俊人(くまがい・としひと)市長がこの中国業者と昨年2度も面談していたことが明るみに出ている。2自治体は、こんな状況ではカジノ誘致など危なっかしくてとてもできないと判断したのでしょう」(社会部デスク)

となれば、残る候補地は6つ。カジノ開業は当初3ヵ所とされているので、立候補自治体がライセンスを手中にする確率は2分の1にまで高まったわけだ。国際カジノ研究所の木曽 崇(たかし)所長が言う。

「カジノ業者は人口の多い首都圏でカジノをやりたいというのが本音。その首都圏では、千葉市がレースから脱落した上、東京都も検討段階にすぎず、小池百合子知事はまだ誘致を口にしていない。当然、正式に誘致を表明している横浜市の当選確率が高まったと考えるべきです」

また、カジノビジネスに詳しいあるシンクタンク研究員は、横浜に加えて以前から当確と目されてきた大阪、そして首都圏や関西圏以外の"地方枠"として長崎が有力候補に浮上したと断言する。

「地方枠の筆頭候補だった北海道が撤退し、残るは長崎、和歌山の争い。しかし、和歌山は大阪とあまりに近すぎる。地域バランスを考えるなら、横浜、大阪、長崎の3ヵ所で決まりでしょう」

ただ、巨額利権が渦巻くカジノの立地選定は、まだまだひと筋縄でいきそうにない。自民党関係者が言う。

「東京五輪が終われば、東京の経済は落ち込む。それを防ぐため、小池都知事と自民党都連が水面下でカジノ誘致に合意するというシナリオがささやかれています。もし合意できれば、自民は都知事選に独自候補を擁立せず、小池支持に回る。そうして小池再選を決め、知事選後の今年秋に電撃的にカジノ誘致を表明するというものです。

これなら、カジノ誘致が知事選の争点にならず、カジノ批判票が野党系候補に流れることもない。誘致レースに正式に参戦すれば、商圏が巨大な首都圏だけに、東京が立地に選ばれるのは確実です。"太客(ふときゃく)"はカジノをハシゴする傾向にありますから、横浜との距離の近さはむしろプラスに働く可能性もあります」

最終局面に差しかかったカジノ誘致レースは混沌(こんとん)としている。