『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、安倍政権のコロナウイルス対策を批判する。

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日本のコロナウイルス対策が後手に回っている。

アメリカ、オーストラリア、シンガポールといった国々は、過去2週間以内に中国を訪れた外国人の入国を拒否するなど厳しい水際対策を取っている。

一方、日本が入国拒否の対象としているのは発生源の武漢市を抱える湖北省と浙江省に滞在歴がある、または両省発行の中国旅券を持つ外国人だけ(2月13日現在)。多くの国々が行なっている感染者がいつ、どこで、誰と接触したかなどのトレース情報も非公表だ。

なぜ、諸外国に比べると、日本の水際対策は生ぬるいのか?

ひとつは安倍政権がアベノミクスへの悪影響を心配したためだろう。見るべき成果がほぼゼロのアベノミクスの成長戦略にあって、唯一順調なのがインバウンドだ。訪日観光客数は伸び続け、安倍政権は2020年の外国人観光客4000万人、国内消費額8兆円という目標を掲げている。

ところが、インバウンド客の約3割を占める中国人の入国を制限してしまうと、昨年の対韓輸出規制強化で韓国の訪日客数が激減しているのに加えてダブルパンチとなり、その目標は達成できない。

アジアからのインバウンド客に頼る地方経済にも深刻な影響を与える。ただでさえ昨年10月の消費増税で日本経済は失速気味だ。中国人の入国制限で経済的ダメージが膨らむことを恐れたために、水際対策が遅れてしまったのだろう。

安倍外交の評価が下落すると官邸が恐れたことも一因ではないか? 北方領土交渉が頓挫したロシア外交に拉致問題解決が一歩も進まない北朝鮮外交。トランプ大統領との特別な関係を築いたと自慢する対米外交も、実際は米追従外交にすぎず、日米貿易交渉では自動車関税撤廃すら認めてもらえなかった。

敗北続きの安倍外交の汚名返上とばかりに、安倍総理が躍起になっているのが中国との関係改善だ。ウイグル族や香港への弾圧で世界中の批判を浴びる中国の習近平主席を4月に国賓として日本に招待するという冒険に出た。

これに対して、安倍政権を支持する右派層が強く反発している。そんななか、中国人を入国拒否にした上で、習主席を特別に入国させて天皇陛下と握手させるとなれば、反発はさらに強まるだろう。

また、中国人の入国拒否で習主席の怒りを買い、中国との関係改善という外交成果をパーにするリスクもある。それだけは避けたい思いも、水際対策の遅れを招いたのではないか?

さらに言えば、東京五輪への不安もあるはずだ。感染が収束せず、夏まで中国人の入国拒否が継続すれば、中国選手団の扱いが問題として浮上しかねない。

だが、大切なのはアベノミクスや安倍外交の評価ではなく、国民の安心・安全だ。政府は国内で感染が拡大しないよう、あらゆる手段を講じるべきだ。

そのためには的確な予防措置が可能となる法律改正も必要だろう。現行の感染症法では感染の疑いのある人でないと隔離できない。新型コロナウイルスのように無症状の感染者が確認されるケースでは、患者と接触しただけの人でも一定期間隔離し、感染の有無をチェックするなどの防疫態勢が取れるよう法改正をすべきだ。

ちょうど国会も開いている。与野党で協力し、ぜひ、感染リスクから確実に国民を守れる有効な改正感染症法を仕上げてほしい。

●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中

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