『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、日本政府の新型コロナウイルスへの対応を批判する(2月22日発売『週刊プレイボーイ10号』「古賀政経塾!!」より)。

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乗客乗員約3700人を乗せ、600以上もの感染例を出したダイヤモンド・プリンセス号は、4月29日から運航を再開する。この騒動で改めて思うのは、政府の新型コロナウイルス対応のひどさだ。

本来なら、早期に乗客乗員全員をウイルス検査し、陽性の人を入院隔離するとともに、陰性でも、高齢者や持病のある人などから順次下船させて、特別な施設で経過観察すべきだった。

ところが、政府はほとんど対策を取らないまま全員を船内に留め、感染拡大を招いた。そのいいかげんさは超ド級と言っていい。真っ先にやるべき乗員の検査をせず、相部屋に寝泊まりさせれば、乗員間感染が広がるのは誰でもわかる。その乗員に料理や配膳をさせていたのだから「バカの極み」。検疫官も防護服なしに乗客に接触して感染した。

日本は公衆衛生レベルが高く、医療先進国と見なされてきたが、それは単なる神話だったのだ。慌てた政府が「感染症対策専門家会議」を立ち上げたのが2月16日。驚くほどの遅さだ。

コロナウイルスに対する政府の拙い対応から見えてきたものがふたつある。

ひとつは日本の医療体制の劣化だ。当初、コロナウイルスの検査能力はたったの1日300件程度。18日からは3000件に増強されたが、韓国でさえすでに1日5000件、2月末までには1万件体制になる予定だ。

米国では、疾病対策センター(CDC)が新型ウイルス専用の検査試薬をすでに開発。利用が始まった。日本の遅れが際立つ。

安倍総理は、「簡易診断キット、抗ウイルス薬、ワクチン等について国内外において研究開発を強力に支援する」と宣言した。だが、実際には、日本の中核機関である国立感染症研究所は、大量の検査に忙殺され、そんな余裕はない。同研究所の予算はこの10年で20億円減らされ、資金も人員も不足。「国内で防護服も不足」と報じられる。

この7年間、「国民の命」を守るために安倍政権が力を入れたのは、安保法制の制定や憲法改正の議論だけ。他方で、「国民の命」に直結する医療への投資を怠った結果が今回の事態だ。

実は、iPS細胞などで日本が世界最先端をいくと信じられている再生医療分野における特許出願数で、日本は米国に次ぐ2位から中国、韓国に抜かれて4位に落ちた。そこには、国民の命軽視という共通の背景がある。

もうひとつ見えてきたのは、行政の劣化、いや「崩壊」だ。厚労省を中心とする官僚組織は「前例がない」「検査体制が整っていない」などを口実に、縦割り意識丸出しで、責任転嫁に明け暮れる。このままでは、各国から、「日本からの入国お断り」と宣告されるのは時間の問題だ。

もともと官僚は前例のない状況への対処は苦手だが、役人だった私の目には、安倍政権の7年間で忖度(そんたく)文化が蔓延(まんえん)し、官僚組織が無責任な指示待ち体制の極みに達したように見える。今回の対応でそれが露呈した。 

国民とマスコミがおとなしすぎることも事態を悪化させる。国民は、今こそ「私たちの命を守れ」と大きな声を上げ、「できないなら政権を倒すぞ」と警告を発しなければならない。

●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中

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