2015年に米海軍戦闘機が赤外線ポットを使ったカメラでとらえた映像。楕円形の物体が空中を高速で移動し、その後回転した 2015年に米海軍戦闘機が赤外線ポットを使ったカメラでとらえた映像。楕円形の物体が空中を高速で移動し、その後回転した

米国防総省が4月27日、「UFO」が映った3本の動画を公開したことが話題になっている。UFOといっても宇宙人の乗り物と断定されたわけではなく、「未確認飛行物体(Unidentified Flying Object)」のことだ。

これらの動画は米海軍戦闘機のパイロットが"謎の空中現象"と遭遇したときのもので、2004年と15年に撮影され、実は17年末には「ニューヨーク・タイムズ」などが独自で入手し、報じていた。すでに当時、米海軍は動画が本物であると認めていたが、今回は上部組織である国防総省が初めて承認し、公式に公開されたという経緯がある。

動画の内容は、簡単に言うと次のようなものだ。

・04年、海軍機が米サンディエゴから約160km離れた太平洋上で楕円(だえん)形の物体が浮遊しているのを発見。物体はその直後に急激に速度を上げた。

・15年の2本の動画のうち1本は、楕円形の物体が高速で上空を移動。速度を落とし回転し始める光景を見たパイロットの「あれはなんだ! 回転しているぞ」という声も記録されている。もう1本は、海上スレスレの低高度を小さな物体が高速で飛行する動画。

元航空自衛隊パイロットで、『実録 自衛隊パイロットたちが接近遭遇したUFO』の著者である佐藤守空将はこう語る。

「これらの動画は米海軍戦闘機F/A-18スーパーホーネットの赤外線ポッドを使ったカメラ映像で、17年当時も私の仲間内ではその真偽が論争になりました。

ただ、動画には『高度7623m、向かい風200kmのなか、時速650kmで左に20度旋回追尾』などといった情報が画像や音声として残っており、戦闘機の性能やパイロットの技量までも読み取れてしまう。国防総省内で相当な議論を重ねた結果、3年たって公開に踏み切ったのだと思います。世論の情報公開請求が活発になり、これ以上隠しておけないと判断したのでしょう」

実際、国防総省は今回の発表に際し、

「徹底的な検証の結果、(中略)機密性の高い機能やシステムの漏洩(ろうえい)には結びつかず、未確認空中現象による空域侵犯に関する調査に影響を及ぼすこともないと判断した」

と説明している。

これが地球外生命体の活動なのか、それともアメリカあるいは他国が開発した高度な新兵器なのか――それは現時点ではまだ判断できないが、興味深いのは、国防総省が今回のケースを「機密解除」ではなく、「非機密」と表現している点。つまり、国家安全保障上の制約に該当しないと判断したということだ。

この言葉をどう読み解くべきか? 米軍の新兵器開発事情に詳しい航空評論家の石川潤一氏はこう見る。

「例えば、UFOを隠しているとされていた米ネバダ州の『エリア51』(グルーム・レイク空軍基地)では、現ロッキード・マーティン社の一部門が1955年から『スカンクワークス』と名づけられた先進開発プログラムを進めてきました。このエリア51の存在を米政府が認めたのは2013年、つまり半世紀以上たってからです。

もし今回の謎の飛翔(ひしょう)物体がそれに類するものだとすれば、国防総省がすでにその存在を公に認めた以上、極秘開発プロジェクトはすでに完成したか、あるいは計画が破棄された可能性もあるでしょう」

米国防総省のDARPA(国防高等研究計画局)では、現在も反重力リフターや超伝導、高高度バルーンといった新たな動力を研究しているとの噂もある。今回の動画公開を機に、そうした機密のベールが少しずつはがれていくことになるのだろうか?