アメリカの宇宙開発企業スペースXの有人宇宙船「クルードラゴン」が国際宇宙ステーション(ISS)から帰還。フロリダ沖のメキシコ湾に無事着水した。アメリカが有人宇宙飛行船の往復に成功するのは実に9年ぶり。
タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。
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8月2日(現地時間)、アメリカの宇宙開発企業スペースXの有人宇宙船「クルードラゴン」が、米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士2名を乗せて国際宇宙ステーション(ISS)から無事地球に帰還。
アメリカは2011年にスペースシャトルが廃止されてからおよそ9年ぶりに有人船の往復を成功させたことになります。海上で回収された船体は修理を経て再利用されるとのこと。宇宙旅行も可能になるのではと期待されています。
1981年に初めて打ち上げられたスペースシャトルはその見た目のカッコよさといい、宇宙時代の象徴ともいえる憧れの乗り物でした。当時小学生だった私も夢中になったものです。
大人になった2000年10月にはテレビの取材で基地を訪れ、シャトル100回目、ディスカバリーの打ち上げを見ることができました。発射台から1km離れた地点から見た打ち上げの瞬間は感動的で、衝撃波に打たれながら、思わず涙。空へ空へと駆け上る機体の姿はけなげで神々しくさえありました。
しかし2003年のコロンビアの悲惨な事故を経て、スペースシャトルは2011年に引退。以後はISSへの行き来の手段はロシアのソユーズのみとなったのはご存じのとおりです。
ソユーズはシャトルに比べると低コストで安全性が高いそうですが、素人目には前時代的に見えます。だって、帰ってくる方法が「海や地表に落ちたのを拾ってもらう」って......シャトルは帰還シーンが最高にすてきだったんです。宇宙から戻ってきて、大気圏突入の高熱に耐え、自ら滑走路に着陸するんですから。
大きな機材を積むことのできるスペースシャトルと人を運ぶことに特化したソユーズを単純に比べることはできないけれど、やっぱりまた次世代のシャトル型宇宙船が見たいなあ、と20世紀宇宙の子としては思うのですけど。
9月に打ち上げられる予定のスペースXには日本人宇宙飛行士・野口聡一さんが搭乗します。以前インタビューした際に野口さんから伺った宇宙飛行士の訓練の話が忘れられません。
メキシコの地下深い洞窟の奥の奥まで行って、ガイドに数時間置き去りにされるのだそうです。何も見えず、聞こえず、誰もいない、暗黒の中にひとり。これで精神力を試されるそうです。そんなことまでしないと宇宙には行けないのかと思うと、私は来世でいいや、という気にもなります。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の実物大模型で見学したISSの日本の実験棟「きぼう」も、いくら窓の外は絶景とはいえ、生活空間としてはかなりの閉塞(へいそく)感。でもこれは、コロナで巣ごもり生活を経験した今なら少しは耐えられそうな気がします。
今のところ宇宙旅行はそんなに甘いものではないけれど、孫の代にはこれも笑い話になっているのかもしれませんね。
●小島慶子(こじま・けいこ)
タレント、エッセイスト。『曼荼羅家族「もしかしてVERY失格!?」完結編』(光文社)が好評発売中