『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、河野太郎行革相に提案したい電力改革とは――?

(この記事は、10月17日発売の『週刊プレイボーイ44号』に掲載されたものです)

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4年後の発電能力を取引する「容量市場」の、初の入札結果が明らかになった。

まずは「容量市場」の説明をしよう。太陽光や風力など、天候次第で発電量が変わる再生可能エネルギー由来の電力が増えれば、電力の安定供給の維持が難しくなるという指摘がある。そこで安定的に発電できる火力発電所など将来の発電能力を取引するオークションを行ない、電力の長期安定供給を目指そうというのだ。

売り手は大手電力会社などの発電事業者、買い手は新電力を含む小売り電気事業者だ。電力市場の自由化で火力などの高コスト電源は価格競争にさらされ、大手電力は設備の更新費用の確保に苦しんでいる。

そこで、小売り電気事業者にオークションで、発電容量の購入を義務づけることにした。これで大手発電事業者は巨額の容量販売代金を得ることができる。このように、「容量市場」は、火力発電所の大半を所有する大手電力会社支援の色合いも強い。

さて、その入札結果である。1万4137円/kW。国が設定した上限価格より1円安いだけだった。これは供給力の新設などに必要とされる価格9425円の1.5倍の高価格だ。

その落札額の総計約1.6兆円は最終的に小売り業者の電気料金に上乗せされ、利用者の負担となる。月260kWh使用する一般家庭では、月500円程度の値上げになるという試算もある。この落札額は同じように容量市場のあるイギリスの5倍、アメリカの2倍強、フランスの10倍強にもなるという。なぜ、こんな高額になったのか? 

先ほど、この取引の売り手は発電事業者、買い手は小売り事業者と説明したが、大手電力は発送電の分離が不完全なせいで、基本的に発電と小売りが親子、または兄弟会社となっている。だから、いくら落札価格が高くて、小売り事業者の支払い費用がかさんでも発電会社と同じポケットの話だから、会社全体ではダメージはない。

一方の新電力は火力などの発電所を持っていないので、「容量市場」に投下した資金はそのまま費用となり、ストレートに電気料金値上げ、経営圧迫へとつながる。上限価格ギリギリの落札価格は、自分たちの優位性をよくわかっている大手電力が入札でこぞって高い金額を示した結果だという推測も成り立つ。

また、問題は電気料金の高騰だけではない。新電力が「容量市場」への巨額支払いで体力を失うことで公平な競争が阻害され、大手電力の独占が維持されかねない。

新電力の多くが太陽光や風力などに力を入れていることを考えれば、再エネの普及にも悪影響が出る。しかも、容量市場を通じて流れる資金は火力などの温暖化ガス排出が多い発電の支援になってしまう。

蓄電池の性能アップがめざましい。AIを駆使し、需要側が電力使用を効率的に減らす技術も進歩している。需要のピーク時に電力を安定的に供給する手立ては増えている。

そもそも、政府は原発を再稼働させる方針で、そうなれば電力は大量に余る。デメリットの多い「容量市場」の仕組みを廃止も含めて根本的に見直すべきだ。

幸い、菅政権には突破力を持った閣僚がいる。河野太郎行革相だ。このままでは電力自由化は確実に頓挫する。その突破力で「容量市場」の見直しをぶち上げてみてはどうだろう?

●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中。古賀茂明の最新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)が10月26日(月)に発売!

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