2月1日に戸田市役所で当選証書を受け取った、「スーパークレイジー君」こと本名・西本 誠氏(本人のツイッターより)

1月31日に投開票された埼玉県戸田市の市議会議員選挙で予想だにしない出来事が起きた。「スーパークレイジー君」こと本名・西本 誠氏(34歳)が、まさかの当選を果たしたのだ。

スーパークレイジー君は、宮崎県出身の歌手・ラッパー。少年院に5年服役、全身にタトゥー、銀座の高級クラブ店長という異色の経歴を持ち、2020年の東京都知事選に「売名のために」出馬。

ベンツを改造した選挙カーを乗り回し、特攻服姿でダンスパフォーマンスを繰り広げた"泡沫(ほうまつ)候補"のひとりだった。そんな彼が今回当選できた裏にはどんな戦略があったのか?

「今回は本気で挑みました。地方都市は現職の地盤が強いという話を聞いて、前回と同じ戦い方をしても負けると思ったので、まじめに選挙活動をしたんです。ところが特攻服が目立ってしまって、なぜか子供ばかり集まってしまう。みんな僕のことをSNSやYouTubeで知っていたらしくて。

そこで考えたのが、小中学生にチラシを配り、それを家に持ち帰ってもらい親御さんやおじいちゃん、おばあちゃんに宣伝してもらう作戦です。ただ、選挙権のない子供と接しても意味がないと揶揄(やゆ)されることもありました。一部の学校からは『クレイジー君に会うために遅刻する生徒が増えた』とクレームも......」

とはいえこの戦略は、意外と的を射ていたようだ。

「ママ層やお年寄りの方で、『この街の未来をつくるのは子供たちなので、あなたに投票したい』という人がどんどん増えていったんです。ところが、投票所がわからないという人がめちゃくちゃ多い。

そこで今度は、期日前投票ができる施設までエスコートすることにしたんです。100人以上の人を連れていきました。ただ、自分も知らなかったんですが、候補者が投票所に入ると公職選挙法違反になるらしくて、施設の前までの案内に徹しました」

見た目とは裏腹に地道な戦いを繰り広げた結果、定数26議席のうち25番目というギリギリの得票数で滑り込み当選。

「最下位の当選者との差は、わずか11票。しかも、誰に投じたのかはっきりしない疑問票が多かったんです。投票用紙に『スパクレ君』とか、『クレイジー』とか書いた方がいらっしゃったようで。

この審議のために、結果発表が遅れに遅れて深夜24時30分までかかってしまいました。自分の名前のせいで、選挙管理委員会の方々にはご迷惑をおかけしました。申し訳ないです」

いろいろと想定外の現象を起こしてしまったクレイジー氏だが、今後の野望は? ゆくゆくは国政に挑むなんて考えていたりして......?

「今はそこまで考えてないです。正直、市政に関してまったくわかっていないので、イチから勉強です。頭空っぽなので、まずはどんどん吸収して、ここで実績をつくる。すべてはそこから。でも、夢は大きく持ちたいですね。例えば、戸田市長になるとか」

戸田市議会の本会議は2月8日から始まる。特攻服での参加はNGだそうで、スーツ姿で出席する予定だという。クレイジー市議は次に何をやらかすのか? 注目だ。