『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、支持率が低下する菅内閣への"野党の本音"について語る。

(この記事は、2月8日発売の『週刊プレイボーイ8号』に掲載されたものです)


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このまま支持率低下が続けば、予算成立後の4月には菅内閣は総辞職に追い込まれるのでは? 今、永田町ではそんな「4月政局」のシナリオがささやかれているが、先日、ある野党議員から興味深い話を聞いた。

「迷走するコロナ対応に、国民の不満は頂点に達している。菅政権を追及するチャンスだ。しかし、追いつめすぎてはダメだ」

菅首相が党の顔では次期衆院選を戦えないという声が自民党内で強まれば、「ポスト菅」選びが加速する。最も穏当なのは細田派、麻生派などの主流派が推しやすい岸田文雄元外相だ。両派に岸田派を加えれば、議員票は200票前後。総裁選で十分に戦える数だ。

ただ、岸田氏では自民党が変わるというイメージはつくれない。国民人気もイマイチだ。毎日新聞が1月16日に行なった世論調査でも、岸田氏が「次の首相にふさわしい」と答えた人はわずか2%(9位)にすぎなかった。党内でも、「岸田ではダメだ」という声は強い。

自民への批判がさらに強まれば、中途半端な看板のかけ替えでは通用しないという危機意識が高まり、もっと強力なカードが必要だということになるだろう。強い逆風下でも選挙に勝てるポスト菅の候補とは?

前掲の世論調査で12%の支持を集め1位になった河野太郎行革担当相が最有力だ。河野人気で自民が復調すれば、衆院選で野党苦戦となる可能性が高い。

冒頭の野党議員は、だからこそ「菅政権を追いつめすぎてはダメ」と言ったのだ。その後の彼のセリフを紹介しよう。

「河野さんは勘弁してほしい。理想は菅さんが続投し、自民がボロボロの状態で総選挙に突入すること。次善は不人気の岸田さんがポスト菅になること。河野さん以外ならほかの人でもいい。それなら野党も十分戦える」

気がかりなのは「追いつめすぎて、河野擁立になるのはヤブ蛇」と警戒する野党と、「なんとか批判をかわして延命したい」と焦る政府・与党がなれ合い、国会審議がなあなあの国対政治になりかねないことだ。

実際、1兆円以上もの「Go To トラベル」が組まれた第3次補正予算案は修正なしで国会を通った。刑事罰導入への懸念が高かった感染症法改正案などの審議でも立憲民主党の追及は鈍く、罰則の微修正などで手打ち。コロナ禍で困窮する人への具体的な支援策はないままだ。もっと菅政権を追い込めるはずなのに、どうして?と感じる人も多いだろう。

野党は、「法案修正を勝ち取った」という茶番で満足し、自民は予算審議を順当に進められて胸をなで下ろす。国権の最高機関である国会の審議は国民不在の状態だ。

政治は、一寸先は闇。ワクチン効果で国民に楽観論が広がり、東京五輪も強行できれば、野党の思惑とは正反対に菅政権は息を吹き返すかもしれない。

逆に五輪中止なら、菅首相が総裁選出馬を諦め、河野行革担当相を後継指名するシナリオもある。総辞職に追い込まれて影響力を失う前に、河野擁立を主導してキングメーカーになるという戦略だ。河野政権誕生後に、菅首相が再び官房長官に就任というジョークのようなサプライズも起きるかもしれない。

今年は「コロナ禍の選挙イヤー」。どんな政変劇が起きてもおかしくない。

●古賀茂明(こが・しげあき)
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中。最新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)が発売中

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