「その目撃情報について海軍情報部が調査を続けているが、まだ分析中だ」
4月5日の会見で、米海軍作戦部長のマイケル・ギルデイ大将はこう語った。
「目撃情報」とは、2019年7月に米カリフォルニアの沖合で、演習中の艦隊が複数の"飛行物体"に追尾されたという事件だ。情報公開法に基づき明らかにされた艦隊の航海日誌には、以下の情報が記されている。
・物体は編隊を組んで飛行し、駆逐艦の速度に合わせて時速30キロ以上で追尾してきた。
・追尾は2日にわたり、両日とも数時間に及んだ。その間の飛行距離は最低でも100カイリ(約185㎞)以上。物体は発光しており、その光の色は変化した。
航空アナリストの嶋田久典氏はこう推測する。
「固定翼機なら失速してしまうほどの低速だったこと、高度210mと低空にもかかわらずエンジンの爆音が聞こえなかったことなどから、乗組員は当初、回転翼式のドローンであると認識したのでしょう」
ただ、他国のドローンが米軍艦を追尾したのだとすれば、最も考えうる"犯人"は中国だが、中国でもこのサイズのドローンは約46分しか連続飛行できない。また、そもそも事件が起きたチャンネル諸島は米軍の管轄地域で、近くからドローンを操縦しようにも関係者以外立ち入り禁止。
そしてNCIS(米海軍犯罪捜査班)、FBI(米連邦捜査局)、沿岸警備隊の調査の結果、米国内には当時、この地域で無人機を飛ばした記録がないという......。
さらに4月9日には、当時の乗組員が撮影した赤外線画像がネット上に流出。そこには従来のドローンでは考えづらいような不規則な動きをする「ピラミッド型の発行物体」が映っていた。これについて米国防総省は「海軍職員が撮影したもの」と認めており、フェイク映像ではない。
いったい、この物体の正体はなんなのか?
「映像を見ると、物体が放つ光は、航空機のフラッシュライト式の衝突防止灯と同じ点滅パターンです。航空法に則して飛行しているとなれば、宇宙人関連のいわゆる『UFO』ではなく、人類が作り、運用しているものでしょう」(嶋田氏)
無人にせよ有人にせよ、これだけの距離を長時間飛び、しかもホバリングなど不規則な機動が可能。この条件を満たすのは、まだ公式には実用化されていない「プラズマ推進装置」を用いた機体の可能性があるという。
「ピラミッド型の機体でエンジンがプラズマ推進式となると、アメリカが"ブラックマンタ計画"として密かに開発してきたとされる最新鋭戦術偵察機『TR-3Bアストラ』が考えられます。小型原子炉並みのパワーが必要な電源の小型化がどこまでできているかが焦点ですが......」(嶋田氏)
2008年にフロリダ大学のサブラタ・ロイ博士がプラズマ推進の原理を発明した際は、まだ15㎝足らずの円盤が地上数㎜を約3分間飛行する程度の規模だった。それから13年の間に技術を進歩させた機体が、海軍上層部も知らない"極秘飛行実験"を行なっていたというシナリオは確かに考えられる。
「TR-3B」が秘密のベールを脱ぐ日は来るのか?