五輪開催に向け邁進する組織委の武藤敏郎事務総長(右)と橋本聖子会長(左)

にわかに盛り上がり始めた「五輪再延期」論。政府は「ない」の一点張りだが、本当なのか? 可能性を探ってみると、見えてきたのは......。

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■IOCを説得する目はまだあるが......

15、16日に朝日新聞が実施した世論調査によると、五輪の開催をどうすべきかを3択で聞いたところ「中止」が43%、「再延期」が40%、「今夏に開催」は14%だった。

再延期はありうるのか? スポーツライターの小崎仁久氏がその可能性について話す。

「今回の大会は『五輪のブランドを傷つけるリスク』が高い。例えば東京五輪は選手や関係者の行動先をホテルや競技場などごく一部に限定し、外部との接触を徹底遮断する『バブル方式』を導入しますが、約9万人が来日する巨大イベントでこの方式がどこまで有効かは未知数。全選手にワクチン接種をするといった対策もどこまで実行できるか......。

もし大会中にクラスターが発生すれば、五輪のブランドは地に落ちます。

ただでさえ近年、開催費用の高騰で五輪開催に手を挙げる都市は激減しており、24年パリ大会と28年ロサンゼルス大会は17年の臨時総会で同時決定する異例の措置を取った。

そんななか、五輪の価値をさらに下げることを開催の最終決定権を持つIOC(国際オリンピック委員会)は選択したくないはず。『アスリートのため、より安全な五輪を開催する。だから1年延期したい』と説得するのは不可能ではないと思います」

IOCを説得する目はまだある。しかし、日本国内の事情を見てみると......。

東京五輪・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長は、3月5日の共同通信のインタビューで再延期は「不可能」とした。その最大の理由は「選手村の再確保が困難」。東京・晴海(はるみ)の選手村は大会後に分譲・賃貸住宅になることが決まっているが五輪延期を受けて引き渡し時期が1年後ろになった。

武藤氏はこれ以上の延期は購入者や事業者に受け入れられないとし、別の施設の確保も「(選手)1万数千人が泊まれる場所は、どこにもない」と話した。

これには前出の小崎氏も「近隣のホテルを借りるなど考えられますが、開催期間の2週間、その規模の人数を泊めておけるホテルを確保するのは現実的ではないかもしれません」と白旗を掲げた。

政府は開催一択。ならば、ワクチン接種をなりふり構わず進めて大会中に何も起こらないよう祈るしかないか。

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1、各地で悲鳴「親のワクチン予約できないよォ!」
2、困ったときの「自衛隊頼み」?
3、五輪“再延期”は本当にムリ?
4、結局、ワシらはいつ打てるの?
5、「抜け駆け接種」問題と「余ったワクチン」活用法
6、変異株は40代、50代が好き!?
7、現地リポート・地獄のインド
8、NY・グアム「ワクチン接種ツアー」の実態