開会式前に天皇陛下(右)と面会する各国首脳ら12人。本来ならここに100ヵ国近くの首脳が集まる予定だった 開会式前に天皇陛下(右)と面会する各国首脳ら12人。本来ならここに100ヵ国近くの首脳が集まる予定だった

五輪開催国の政権の"役得"のひとつが、開会式に出席する各国首脳との「五輪外交」。しかし、今回ばかりはそれも空振りに......。

連日の猛暑を吹き飛ばす勢いのメダルラッシュが続いた、異例の"無観客五輪"前半戦。しかし競技以外を見れば、開会式は直前まで不祥事連発、そして開幕後も緊急事態宣言の効果は薄く新型コロナの新規感染者数が爆増......と、混乱が続く。

8月2日(月)発売の『週刊プレイボーイ33・34合併号』では、飲食業界、政界、経済界など各所で起きている「場外乱闘」を総力取材。ここでは関係者に聞いた、「五輪外交」の舞台裏を公開する。

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開会式を挟んだ前後3日間、菅義偉(すが・よしひで)首相のスケジュールは穴だらけだった。

本来は開会式に合わせて多くの国々のVIPが来日し、華やかな首脳外交が展開されるはずだった。ところが、新型コロナ感染拡大を受け、来日を見合わせる首脳が続出。結局、わずか10ヵ国程度の首脳や要人との会談・懇談をこなしただけで、「五輪外交」はあっけなく終了となってしまった。

その舞台裏を外務省関係者がこう語る。

「年初の時点では100ヵ国近くの首脳が開会式に参加予定でしたが、6月には早くも50人を割る事態に。2012年のロンドン五輪では約80人、ジカ熱の大流行で訪問キャンセルが相次いだ16年のリオ五輪でさえ約40人の外国首脳が出席したことを踏まえ、官邸からは最低でも30人前後のVIP訪問を確保せよと厳命が下りました。

しかし、緊急事態宣言の延長や再発令の影響もあってその後もドタキャンは相次ぎ、結局、首脳級の訪日はジル・バイデン米大統領夫人を含めても12人にとどまってしまったわけです」

その結果、開会式前後の菅首相のスケジュールは......。

「五輪外交のゴールデンタイムは開会式を挟んだ3日間。この間、15~30分ほどの短時間の首脳会談がマラソンのように延々と続くのが通例です。ところが、各国首脳の訪日ドタキャンで、この3日間の菅首相のスケジュールがスカスカになってしまったんです」(全国紙官邸担当デスク)

首相動静をチェックすると、フランスのマクロン大統領ら7ヵ国との首脳級会談をこなした24日こそ比較的多忙だったが、開会式前日の22日午前は完全フリー。開会式当日の23日に至っては、午前・午後合わせて約9時間も議員宿舎での待機となっている。ちなみに、23日はやはり直前に中止が決まった韓国・文在寅(ムン・ジェイン)大統領との首脳会談などが予定されていたという。

前出の外務省関係者が言う。

「訪日したなかで、いわゆる"主要国"の首脳はマクロン仏大統領くらいですが、これも24年パリ大会への引き継ぎの儀礼的訪問にすぎない。北京冬季五輪を控え、首脳級の訪日が期待された中国も結局は閣僚級の国家体育総局長しか送ってきませんでした」

もちろん、感染拡大を受けての首脳訪日中止は仕方ないことではある。緊急事態宣言の再発令に前後して、日本側から各国首脳に配偶者などの同伴なし、随行者は原則12名以下といった要請が出たことが、さらなるドタキャンにつながった面もあるという。

しかし、菅首相がコロナ禍でも五輪を強行した背景には、派手な首脳外交を国内向けのアピール材料とする計算もあったはずだ。ジャーナリストの川村晃司氏が言う。

「五輪になぞらえて言えば、菅外交は早々と予選敗退という表現になるでしょう。五輪外交で支持率をアップさせ、秋の衆院選に突入するというもくろみは完全に崩れてしまいました」

足元を見れば、五輪開催中の東京を中心に新規感染者数は増え続けている。五輪後の支持率はいよいよ危険水域?