ジョー・バイデン氏(79歳)が米大統領に就任して1年がたつ。ドナルド・トランプ前大統領(75歳)に比べて日本での報道は(いいのか悪いのか)少ないが、彼の1年はどう評価されているのか? 明治大学政治経済学部の海野素央(うんの・もとお)教授はこう話す。
「まず、就任してすぐの3月に『アメリカ救済計画法』という予算規模1.9兆ドル(約219兆円)の経済対策を成立させました。手厚い失業保険や現金給付などを行なったなかで、特に評価されている『子供減税』は、子育て世帯に現金を毎月給付するもの。
ほかにも、わずか1年足らずで600万人の新規雇用をつくり、トランプ政権時代にコロナ禍で10%台まで悪化した完全失業率を3.9%に改善しました。バイデン大統領のスピード感と持続的な対策に、国民の信用度は増していました」
では、一方でトランプ氏はこの1年、何をしていたのか。
「昨年10月9日にアイオワ州で大規模集会を開きました。なぜアイオワ州かというと、大統領選に向けた民主・共和両党の最初の党員集会が開催されるスタート地点だからです。つまり、ここに来たということは、彼は2024年の大統領選を視野に入れているのだと考えられます」
トランプ氏は返り咲きに向けて着々と動いている!?
「その証拠に、彼は前回の大統領選で行なっていたバイデン氏への"年齢イジリ"をパタッとやめたんです。自分が同じくらいの年齢になっているから。
また、大統領選でその州の選挙人の得票数を確認する各州の州務長官の選挙が今年11月の中間選挙と同時に行なわれるのですが、ここに自分の息がかかった候補者を立てまくっています。24年に立候補するのは明らかです」
いや、再選はないでしょ、と笑っていられないのがトランプ氏のコワいところだ。ロイター通信が昨年12月に行なった共和党支持者への調査によると、共和党の大統領候補の中でトランプ氏が54%と最も高い支持を得ており、次点のフロリダ州知事ロン・デサンティス氏の11%を大きく突き放している。依然トランプ人気は高いようだ。
そして、その影響はバイデン氏の支持率低下にもつながっている。
「バイデン大統領は、急成長する中国との長期的な競争において教育が鍵だと考え、3、4歳児の教育費とコミュニティカレッジ(2年制大学)の学費を無償にするという大型歳出法案を打ち出しました。
しかし、民主党保守派のジョー・マンチン上院議員がこの法案に反対したんです。実は、その背景にはトランプ氏の『コミュニティカレッジの学費免除は不法移民に適用される』という発言がありました。
もちろん、これは真っ赤な嘘なのですが、マンチン氏が選出されたウェストバージニア州は、トランプ氏が約70%の得票でバイデン氏に勝利した超保守州。票田を確保するには、どうしても法案に賛成できなかったのです」
この件に関して、バイデン大統領とマンチン氏の話し合いは継続しており、年末年始をまたいでまで長引く内部のゴタゴタに国民は飽き飽き。バイデン氏のリーダーシップが疑問視され、支持率は低下している。現在、不支持率が支持率を上回っているという報道もある。
今年の中間選挙で共和党が民主党よりも議席を多く獲得すれば、"トランプ大統領"復活に一歩近づく......?