『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、密接な関係にある政治家と旧統一教会の問題を指摘する。

(この記事は、8月8日発売の『週刊プレイボーイ34・35号』に掲載されたものです)

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安倍晋三元首相が暗殺された事件をきっかけに、政治家と旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)のただならぬ関係が次々と明るみに出ている。

旧統一教会は悪質な霊感商法や献金トラブルなどで、多くの被害者を生み出した反社会的団体だ。にもかかわらず、安倍派を中心に多くの国会議員が選挙ボランティアや献金などの支援を受け、公然と教会のイベントに出席したり、祝電を送ったりしている。

しかも、当選1、2回の陣笠(じんがさ)議員だけでなく現職の大物閣僚や知事など、政府や自治体の要職にある政治家まで密接な関係を持っていた。経験豊富な政治家が、有力政治家を教会の広告塔として使おうという旧統一教会側の思惑どおりに、しかも公然と動いたのだ。

通産省(現・経産省)で大臣秘書の経験がある私の感覚からすれば、こうした関係はありえないことだ。

大臣や知事には秘書官らの優秀なスタッフがつき、政務の日程を含め多忙な政治家のスケジュールなどを管理する。会合への出席、来賓あいさつ、祝電などの依頼が多数来るが、相手先の調査を行ない問題があれば、たとえ大臣であっても秘書官らから要請を断るよう強く進言し、大臣もこれを受け入れるのが普通だ。

多くの訴訟を起こされ、その被害認定が最高裁で確定している旧統一教会のような団体は暴力団並みの扱いで、真っ先に除外されるはずだ。ある知事経験者も、在任中に教会関係の団体からアプローチが何回もあったが、事務方から「絶対だめ」と言われてすべて断ったと私に語っている。

なのに、自民を中心に多くの政治家が公然と旧統一教会とのつながりを強めたのは安倍元首相の存在があったからだろう。元首相は関連団体の集会にビデオメッセージを送ったり、確認されただけで6度も機関紙の表紙を飾ったりするなど、旧統一教会との関係をあえて誇示していた。

ある安倍派議員の話では、安倍元首相は、選挙時には公称60万人の信者のいわゆる「統一教会票」の票割りを教会側に依頼できるほどの親密ぶりだったが、安倍派の中では多くの議員がこれを知っていたそうだ。

ちなみに、第2次安倍政権がスタートした2012年以降、13年、16年、19年、22年の各参院選で旧統一教会が元首相の差配で特定の自民候補を支援したことが伊達忠一前参院議長ら、複数の自民議員が証言している。

こうした安倍元首相の振る舞いを見れば、多くの政治家が「時の首相が堂々とやってるんだから大丈夫」と考えたのは当然だ。

問題はそれだけにとどまらない。伝統的家族観を重視する教会の支援を受けるために、「選択的夫婦別姓」や「同性婚の実現」に反対して教会に媚びを売る〝保守〟政治家が増えたことで、国家の基本政策を歪めるという深刻な事態も生じている。

「モリ・カケ・桜」で示された安倍元首相の倫理観は「捕まらなければ何をやってもよい」だった。この日本政治トップの「地に堕ちた倫理観」が自民党内に蔓延(まんえん)し、霞が関の官僚たちも汚染した。これを正すには、現職のトップ・岸田文雄首相が旧統一教会との一切の関係を絶つと明言するしかない。

そして、それは〝建前〟でも構わない。今や「李下(りか)に冠を正さず」という本来政治家が従うべき倫理観は、「建前」としてさえ存在しなくなったとしか思えないからだ。

●古賀茂明(こが・しげあき) 
1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。ウェブサイト『DMMオンラインサロン』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中。最新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)が発売中

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