ペロシ米下院議長の台湾訪問を受け、激怒した中国が軍事演習を開始した。これに対抗するように米軍はフィリピン海に空母艦隊を派遣。空母「ロナルド・レーガン」(戦闘機FA18各種五個飛行隊計55機)、強襲揚陸艦「トリポリ」(通称ライトニング空母、F35B、20機)、ミサイル巡洋艦「アンティータム」、駆逐艦「ヒギンズ」を展開した。これに呼応するように、中国海軍は空母遼寧(J15最大24機搭載)山東(J15最大36機搭載)にて出撃している。
たとえ軍事演習中でも、偶発的なきっかけで戦争は勃発する。「100%無い」と言われる事態が起こるのが戦争の常である。考えられるケースのひとつとして、もし「米中空母海戦」が発生したとするならばどのような展開が予想されるのだろうか? 沖縄基地配備の航空自衛隊302飛行隊長だった杉山政樹元空将補はこう語る。
「純然と空母対空母の戦いになるならば、性能的に米国が勝利します。戦闘機の搭載機数からいえば互角ですが、アメリカの空母は早期警戒機を搭載しているので、カタパルトからフル兵装で飛べる有利さがある。第五世代機のF35Bステルス戦闘機は隠密行動も取れます。
考えられる結果は『中国戦闘機全滅』。海上だからに逃げ隠れ出来ないし、世代の違う戦闘機の戦いでは、F22が第四世代機F15と空戦をしたら、144戦144勝0敗の完勝で負け無しの結果になりますから、第四世代機の中国J15と戦えば同じ結果になりますね」(杉山元空将補)
米空母に何度も乗艦取材の経験のあるフォトジャーナリストの柿谷哲也氏はこう語る。
「米空母から飛び立つFA18は、射程800kmの長距離対艦ミサイル『LRASM・AGM-158C』を搭載しているので中国空母撃沈は可能です」
「中国空母は2隻とも壊滅、習近平の面子は完全に潰されます」(杉山元空将補)
自国の空母を撃沈され、メンツを完全に潰され本気になった中国。どのような反撃の手段を企てるのだろうか? 米国防シンクタンクの海軍戦略アドバイザー・北村淳博士は先の中国軍の対台湾軍事演習で奇妙な光景を衛星写真で見つけた。
「台湾の対岸の中国空軍基地に旧式機J6がずらりと並びました。これは爆薬を搭載した無人特攻機で、総数は500機です」
中国お得意の無人機技術だ。
「小型のドローン無人機を群れのようにして大量投入する中国のスウォーム技術を使うならば、J6ドローン機500機の集団運用は可能です。だから、米空母搭載機と艦隊防空だけで対抗するのは無理でしょうね。米空母艦隊が、J6特攻機の最大飛行距離1500kmの射程圏内に入り、自爆するために突っ込んでくる。全機への対処は難しく、撃ち漏らしますね」(杉山元空将補)
そこに、中国空母艦載機J15が空対空ミサイルだけで襲い掛かる。
「航空自衛隊沖縄基地二個飛行隊と嘉手納基地米空軍のF15、計100機、ミサイル8発、20mm機関砲フル装備で上がります。日頃から巡航ミサイルを撃ち落とす訓練をしているので、巡航高度を飛んでいるマッハ0.75以下の亜音速のJ6は撃墜可能です。まず、J6編隊の前から撃って、パス。後ろにターンで入って残りのミサイルとガンでバシバシ落していく。私が302飛行隊長の頃ならば、F4でも10機落とせた。全機撃墜ですね」(杉山元空将補)
J6ドローン機500機は海の藻屑となった。しかし、中国は諦めない。
「戦闘機に護衛され、空対艦ミサイルを搭載した中国H6爆撃が、イージス艦から等距離になる地点で多方向から大量の対艦ミサイルを米空母に放ちます。イージス艦は同時多発に発射した対空ミサイルを目標に近い順から3発までしか誘導できません。
ですので、中国は大量の対艦ミサイルを多方向から等距離で発射して、対空ミサイルをかわし、電波ジャミングとファランクス20mm機関砲のバリアを突破すれば、空母に命中できます」(柿谷氏)
さらに、中国のJ6無人機には奥の手がある。
「J6特攻機自体に爆薬が充填され、さらに小型空対艦ミサイル、対レーダーミサイルを発射します。米空母艦隊の迎撃目標は1000~1500個になりますので、米空母が格好の標的になります」(北村博士)
そして、ここで切札を投入!
「中国が本土からDF17などの地対艦ミサイルを、可能な限りの数を撃って来るでしょう。米イージス艦のわずか70発程度のBMDミサイルでは迎撃は無理です」(杉山元空将補)
米空母2隻、轟沈。
「中国は波状攻撃ではなく、米艦隊の対空戦闘システムの処理をかく乱するために、対艦弾道ミサイル、超音速巡航ミサイル、亜音速巡航ミサイルであるJ6特攻機によって米空母艦への攻撃を実施するのです」(北村博士)
激戦必至の「米中空母決戦」。果たして現実となる日は本当に来るのだろうか?