ロシアによるウクライナへの侵攻が始まってから間もなく1年。昨年から米英を中心として対戦車ミサイルや榴弾砲などの兵器をウクライナへ供与してきたが、今年はそれがさらに本格化している。ロシア軍を駆逐し、領土を奪還するために各国が供与している兵器を紹介!
1月19日、アメリカ国防省は自国装甲車のストライカーやM2ブラッドレーなど、より強力な兵器供与を発表。そしてイギリスはチャレンジャー2、フランスはAMX-10RCという自国製の戦車の供与を発表した。
そんな各国の供与兵器でトピックとなっているのが、"最強戦車"といわれるアメリカのM1A2エイブラムスとドイツのレオパルト2。この2台が優れている部分とは? 元陸上自衛隊戦車大隊所属・照井資規(もとき)氏が解説する。
「エイブラムスは照準や索敵システムなどのハイテク部分が優れていますが、これには秘匿部分が多くあり、おそらく米軍仕様をダウングレードしたモデルが供与されるでしょう。それでも攻撃力は十分です。
レオパルト2はNATO諸国の定番戦車であり、パーツ供給や訓練がスムーズに行なえます。戦術としてはウクライナ軍の旧型戦車で敵戦車の装甲を削り、トドメを照準性能に優れたエイブラムスやレオパルト2が担当するのが理想です」
米独の戦車は戦況を変えられるほどの戦闘力がある?
「現在、ウクライナでは対戦車誘導ミサイルや対戦車ヘリでの攻撃が無力化され、"戦車を倒せるのは、より強力な戦車のみ"という認識です。そういった意味では大いに戦局へ影響を与えます。
ただ、戦場での戦死者の70%は砲弾によるもので、アメリカが供与するハイマース、M109 155㎜自走榴弾(りゅうだん)砲やM777 155㎜榴弾砲が戦場の主役です」
ウクライナは航空兵器の供与も打診していますが?
「最も活躍できるのは空対空、空対地攻撃ができるF-16や、戦車キラーのA-10といったアメリカ製の航空機です」
大型輸送機やヘリは?
「ヘリは汎用性の高いフランスのピューマ。大型輸送機はロシアが"自国領内を侵犯する恐れがある"と見なし、戦術核の使用も躊躇(ちゅうちょ)しない恐れがあり、NATO加盟国からの供与は政治的に難しい。そして前出のエイブラムスやレオパルト2もロシア側を刺激するには十分な能力を持った兵器なのです」
米独の最強戦車の供与が、侵攻2年目のウクライナ戦局を左右するかもしれない。
●元陸上自衛隊戦車大隊所属・照井資規(もとき)
元陸上自衛隊幹部。現役生活20年間で戦闘職種である普通科と、医療職種である衛生科を経験。陸自の武器・戦術の研究機関である富士学校、医療研究機関である衛生学校の研究員も務め、戦車大隊では各種対戦車戦闘を担当した近代戦に精通するジャーナリスト
写真/アメリカ陸軍 アメリカ海兵隊 アメリカ空軍 イギリス陸軍 ウクライナ国防省 ドイツ陸軍 フランス陸軍 General Dynamics Land Systems