2月12日のロイターの報道によれば、イギリスを始めとする欧州各国の兵器製造業者が、ウクライナ国内で兵器を製造する合弁企業を設立する協議を行ったという。これはすなわち、ウクライナで兵器工場を作るという事だ。この動きに対して、国際政治アナリストの菅原出氏はこう語る。
「ウクライナがロシアに戦争で勝つという事は、ロシア領に攻め込んでいくということです。そうなると、ロシアは核兵器を使用する可能性がある。
NATO(北太平洋条約機構)はそんな対ロシア戦争に巻き込まれるのは嫌ですが、こんな形で他国のウクライナを侵略して勝たれても困る。だから、ロシアに勝たせずウクライナに負けさせないようにするのが欧米のスタンスです」
アフガンで実戦経験のある経験を持つ元米陸軍大尉・飯柴智亮氏はこう言う。
「何がなんでもウクライナを西側陣営に引き入れてやる、と言う西側各国の圧力を感じます。ウクライナに"新欧米国家"を作れば、ロシアは喉元に短剣を突きつけられたも同然です。兵器工場では陸戦兵器中心に製造されるのは間違いないです」
2月14日の時事通信は、欧米諸国の弾薬生産と供給が限界にきていると報じた。さらに同日のロイターの報道によれば、米軍がイランからの密輸武器をウクライナに供与すると発表。軍用小銃(AKと推定)や弾薬160万発などになるという。
「ソ連製AKの方が使い易く、その弾薬が足りないのでちょうど良いと言う事ですが、これは押収した武器を第三国に送ってはならないとする国連決議に違反しています。
米国は中東有事の際に使う兵器・弾薬を、イスラエルに事前集積しています。イスラエルを説得して、その弾薬をウクライナに供与しました。ウクライナ軍は今、弾が不足している。相当深刻な状況なのだと思います」(菅原氏)
各社の報道によれば、ウクライナ軍は砲弾を一日1万発消費しているとのこと。小銃弾に関しては正確な数字は出ていない。数十万発の補充ではでは済まないのかもしれない。
ただ、それだけの量の兵器を使わなければ、ロシア軍の進撃は止められないだろう。ウクライナの兵器工場ではやはり、小銃弾用弾薬を製造するのか。
「弾薬はCIP(The Commission International Permanent)からの承認を得ないと製造できない規則になっています。あの戦時下のウクライナでCIP認証が取れるのかどうかはわかりませんが、世界全体で弾薬の需要に供給が追い付いていない状況にあります。
どこもフル回転で生産して、それでも間に合わない状況です。なので、弾薬製造の可能性は低くはないと思います」(飯柴氏)
軍用小銃は生産しないのか。
「小銃、拳銃は末端戦術の兵器です。もう少し大きいレベルの兵器、装甲車、歩兵戦闘車などを製造する協議を行っていると考えられます。
欧州の軍事産業展示会『ユーロサトリ2022』で、UOP(Ukr Oboron Prom=ウクライナ国防産業)が大きなブースを出展していて、大忙しで商談を何件もやっていたのを自分は現地で目撃しました」(飯柴氏)
2月5日のウォールストリートジャーナルの報道によると、ロシアはモスクワから東に約1,000kmにある工場で、イランが開発した無人自爆ドローンを少なくとも6000機生産し、ウクライナに撃ち込むらしい。
また1月19日のロイターの報道によると、ロシアのプーチン大統領が防空システムの製造工場を訪問。対空ミサイルの数は世界合計数と同数で、米国の3倍あると指摘した。
ウクライナ国内に兵器工場を作れば、ロシア軍は無人自爆ドローンとミサイル各種で全力で攻撃してくる。ウクライナ軍は銃弾、砲弾に続き、対空ミサイルも枯渇するだろう。
「プーチン大統領は元KGBです。今、ロシアの資産家の変死事件が続発していますが、これはKGBの常套手段です。空爆するよりこのKGBのやり方で工場を潰しにかかってくるでしょう」(飯柴氏)
ウクライナ国防産業関係者の変死事件が続発するのか。2月19日にロイターは、世界の工場である中国がロシアに対して、兵器を含む様々な種類の「致死性のある支援」をすると報じた。
「ロシアにとってのウクライナが、中国にとっての台湾と同じなのです。欧米がこれだけウクライナを支援するのは、私は中国への間接的なメッセージだと考えています。もっとわかりやすく言うと、脅しです。
それは、『中国が台湾侵攻すれば、世界中から孤立させられる可能性がある』ことを悟らせる目的があるのだと思います」(飯柴氏)
いずれにしろロシアでは、国内での兵器生産と海外からの武器支援に関して、もうすでに万全の態勢が敷かれている。