政権3期目が本格始動した習近平総書記。待ったなしの少子高齢化にどう対処するのだろうか 政権3期目が本格始動した習近平総書記。待ったなしの少子高齢化にどう対処するのだろうか
中国国家統計局は、2022年末の総人口が前年末比85万人減の14億1175万人だったと発表。61年ぶりの人口減少を記録した。インドに抜かれた可能性があるとはいえ、それでもまだ世界第二位の人口大国だ。しかし中国人ジャーナリストの周来友氏によると、中国国内では過去の人口抑制政策によるさまざまなひずみが顕在化しつつあるという。

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中国では3月5日~13日の日程で、国会に相当する第14期全国人民代表大会(全人代)が開催されました。今回の全人代では閣僚人事が発表された他、国防費の増強やコロナ禍で落ち込んだ経済対策などについて報告が行なわれました。

一方、中国市民が注目していた少子高齢化に関する具体的な言及はほとんど行なわれず、政府の姿勢に疑問を抱く世論も静かに高まってきています。

少子高齢化は今後、中国の国力減退のみならず国家存亡の危機にも直結する問題です。経済的に中国との関係が密接な日本にとっても、こうした中国の国内情勢は決して対岸の火事とは言えないでしょう。

■少子化対策に転じた中国

中国は1979年から始まった「一人っ子政策」を2016年に廃止し、現在は3人目の出産を奨励する政策に切り替えています。

さらに、産休・育休の期間延長、教育費の負担軽減を目的とした学習塾の営業禁止令、離婚率引き下げのための離婚取り下げ期間の導入などを行なってきましたが、少子化の波を食い止める抜本的な対策とはなりませんでした。

高学歴化に加え女性の社会進出が進んだことによる晩婚化、さらに教育費の高騰なども少子化の原因となっています。中国では子供は資産という考え方でしたが、今や「子供=借金」というイメージさえ定着しつつあるのです。

中国の発展を象徴する広東省深セン市の高層ビル群だが、その裏では社会に様々なひずみが顕在化しつつある 中国の発展を象徴する広東省深セン市の高層ビル群だが、その裏では社会に様々なひずみが顕在化しつつある
この他にも日本では考えられないような少子化対策も取られています。例えば、結婚のハードルを下げることを目的に、中国で習慣化していた高額な結納金を引き下げるよう呼び掛けたり、一部の大学で恋愛を学問的に学ぶ講義を導入するなどしています。

国家が行なう上記のような少子化対策に加え、さらに地方政府独自の少子化対策も行なわれています。北京市では子供をふたり以上持つ子育て世帯に対し、公営住宅への優先的入居制度を試験的に導入しています。また、広東省や四川省では出産一時金や育児補助金の上乗せも実施されています。

一方で、無節操な少子化対策が非難の的となった例もあります。山西省沢州県(たくしゅうけん)では、子育て世帯に対しふたり目と3人目の子供の高校入試の際、点数を10点加算することを発表し、市民からは子供の有無や数で教育上の公正を歪める政策に批判が集中したのです。

■「2000万円問題」より過酷な中国の老後

中国で少子化と同時に進んでいるのが高齢化です。一般的に、中国では在宅介護が基本でその割合は90%以上となり、日本のように高齢者施設への入居は極めて低く10%以下の割合となっています。

これは儒教の「高齢者を敬う」という伝統的な思想の影響もあり、「子供が親の面倒を全て見る」ことが当然の義務となり、親を施設に入れることに罪悪感を覚える人が多くいるからです。

2年前には、高齢女性が自身への扶養義務を果たしていないとして子供を裁判に訴えるという事件も発生し、裁判所は扶養義務を果たさない場合、子供の相続権を剥奪する可能性があると述べています。

中国では高齢者人口に対して、高齢者施設や介護士人材が圧倒的に不足しています。現在、中国政府が推し進めている高齢者対策の多くもこうした社会事情を反映しており、あくまでも在宅介護を中心に、訪問介護士などの充実に重きを置いた内容となっているのです。

しかし、一人っ子政策の結果、ひとりの子供が両親や祖父母の老後の生活を支えていかなければならない現実もあり、過去の政策の負の側面を国民に押し付ける結果となっています。

ジャーナリスト・周来友。1963年、中国浙江省紹興市生まれ。1987年に私費留学生として来日し、司法通訳人を経て現職。翻訳・通訳派遣会社も経営している ジャーナリスト・周来友。1963年、中国浙江省紹興市生まれ。1987年に私費留学生として来日し、司法通訳人を経て現職。翻訳・通訳派遣会社も経営している

2019年に起きた「老後2000万円問題」をご記憶でしょうか? 金融庁が平均的な高齢夫婦が退職後に月5万円の赤字になると示し、当時の麻生財務大臣がこれを受けて資産形成の必要性を呼びかけた、あの一件です。

財政のトップが「年金だけでは不十分」と認めたこの発言は、波紋を呼びました。しかし中国の場合、老後の資産形成はもっと過酷です。

今年3月、中国東北証券の首席経済アナリストが、「40歳から本格的な老後の備えをするべきだ」とするレポートを発表し、反響を呼びました。レポートでは、「40歳までには持ち家を所有し、安定的で高収入の仕事の確保をし、ローンや負債はできるだけ早期の完済を目指すべし」などという提言がされています。

これに対し、中国のネット上では、「結婚しろ、子供産め、家買っておけ、老後の備えもしておけってことだよね。1人で親の介護してる人にも同じことが言えるのか!」「自分は一生独身でいいし子供もいらない。最後は独居老人として人生を終えたい。この国に希望はない」などのコメントが寄せられました。

「産むな」と言ったかと思えば「産め」と言ったりと、まるで中国の現役世代は、ひねれば子供が出てくる蛇口のような扱いを受けていて、本当に気の毒な限りです。