岸田総理にとって今回の補選は、政権の命運がかかっている重要な選挙 岸田総理にとって今回の補選は、政権の命運がかかっている重要な選挙

統一地方選挙は後半戦に突入した! 市区長選や市区町議選など身近な代表を選ぶ選挙だ。そして、同時に行なわれる補欠選挙は、結果次第で岸田政権の命運が変わる重要な選挙だ。これらの見どころを長年選挙取材を続けているジャーナリストの横田 一氏に聞いた。

* * *

■維新が躍進した前半戦。新たな地域政党も誕生!

統一地方選挙〝後半戦(4月23日投開票)〟が始まった。その見どころを紹介する前に、まずは〝前半戦〟を振り返ろう。

前半戦の注目は、大阪府知事&大阪市長の「W選挙」だった。結果はどちらも大阪維新の会が勝利。大阪府知事には吉村洋文氏が、大阪市長には横山英幸氏が当選した。

ジャーナリストの横田 一氏が解説する。

「ロックスター並みといわれる吉村人気がそのまま表れた形です。横山さんの街頭演説には、吉村さんや松井一郎(前大阪府知事)さんが応援にやって来て『横山をよろしく』と話していましたから、吉村人気で当選したといってもいいでしょう。

しかも、大阪維新の会は、同時に行なわれた府議選と市議選で単独過半数を確保し、大阪を完全制圧しています。これでカジノ・IR(統合型リゾート)が、ゴリ押しで認められる可能性が高まりました。

しかし、大阪は経済成長率(府や市の実質総生産から算出した2011~17年度の年平均経済成長率)が全国平均(0.9%)より低かったり(大阪は0.6%)、新型コロナでは人口当たりの死亡者数が突出している(大阪府)など、多くの問題を抱えています。人気だけに頼る政治がいつまで続くのかが今後のポイントになってくるでしょう」

保守分裂となった奈良県知事選は、漁夫の利を得て日本維新の会の山下 真氏(写真中央)が当選した 保守分裂となった奈良県知事選は、漁夫の利を得て日本維新の会の山下 真氏(写真中央)が当選した

実は、今回の統一地方選での維新の人気は、大阪だけにとどまっていなかった。大阪の隣の奈良県知事選でも、日本維新の会公認の山下 真氏が当選したのだ。

「奈良県知事選は、現職の荒井正吾氏と高市早苗氏が擁立を主導した平木 省氏の保守分裂選挙でした。そのため、吉村さんも維新の馬場伸幸代表も奈良入りして、盛んに山下候補を応援していたんです。結果、漁夫の利を得る形で維新の山下氏が勝利しました。

奈良県連会長でもある高市氏は故・安倍晋三元総理の後ろ盾を失って、最近は党内でも孤立気味でしたし、この知事選の敗北で責任を問われることになるでしょう。

一方、維新は選挙期間中から『関西広域連合みたいな形で奈良も大阪と一緒にやりましょう』ということを言っていたので、奈良での当選を足がかりに、大阪だけでなく広く関西に影響力を広げていくと思います」

もうひとつ。前半戦では、兵庫県議選も注目だったと横田氏は言う。

「明石市の泉房穂市長が昨年立ち上げた政治団体『明石市民の会』所属の橋本慧悟氏が、兵庫県議選明石選挙区で他候補に大差をつけてトップ当選しました。

明石市内では、泉市長とツーショットのポスターもたくさん張ってあり、勢いを感じました。明石市民の会は、維新に比べれば規模は小さいのですが、全国的な広がりにつながる可能性があります。

統一地方選の後半戦には、明石市長選挙があります。明石市民の会からは、丸谷聡子氏(前市議)が立候補予定です(4月12日時点)。

一方の自民党は、明石市を地元とする安倍派幹部の西村康やす稔とし経済産業大臣が擁立する林健太氏(前市議)が立候補予定(4月12日時点)。

ここでは子育て政策が争点となりそうですが、岸田政権の閣僚の地元で『岸田政権の付け焼き刃的な子育て政策ではダメだ』と判断され、市長選で負けるようなことがあれば、実質的に市民は岸田政権にNOを突きつけたことになり、政権にとって大きなダメージになります。

また、明石市民の会は、明石市議選にも5名の立候補予定者がいます。ふたりは子育て中の女性で、3人は若手の男性です。この候補予定者たちの当落にも注目です」

■後半戦は函館市長選と5つの補選に注目!

では、その後半戦の明石市以外の見どころはどこなのか。

「北海道の函館市長選には、現職の工藤寿樹氏が立候補予定で、タレントの大泉 洋さんのお兄さんである大泉 潤さんも立候補を予定しています(共に4月12日時点)。

工藤氏は青森県・大間原発の建設差し止めを求めて提訴しています。津軽海峡を挟んで青森県の大間町に原発が建てられようとしていますが、もし原発事故が起こったら函館市も被害を受けるということで訴訟中です。

しかし、工藤氏は原発推進の自民党からの推薦を受けているんです。この矛盾した点を大泉氏がどう突くのかが注目されます。

弟さんの影響で大泉氏の知名度は高いですし、73歳の工藤氏に比べて大泉氏は57歳と年も若い。もともと市役所の職員で政策通でもあるのでいい勝負になるのではないでしょうか」

北海道函館市長選に出馬予定の大泉 潤氏は、タレント・大泉 洋氏の兄 北海道函館市長選に出馬予定の大泉 潤氏は、タレント・大泉 洋氏の兄

統一地方選ではないが、岸田政権の今後を占う上で注目されているのは、同じく4月23日に投開票される衆参補欠選挙だ。

参議院は大分選挙区。衆議院は千葉5区、和歌山1区、山口2区、4区の計5つ。

「大分は、自民党公認の白坂亜紀氏と、立憲民主党公認の吉田忠智氏の一騎打ち。

白坂氏は、東京・銀座のクラブなど飲食店を経営している手腕と、『大分県豊の国かぼす特命大使』という観光大使をやっていたり、銀座でミツバチを養蜂する『銀座ミツバチプロジェクト』の理事長を務めるなど、市民団体活動の実績が評価されたようです。

一方の吉田氏は、元社民党党首を経験した前参議院議員で知名度は高く、しかも大分は村山富市元総理のお膝元で野党が強い県です。そこで、危機感を募らせた自民党は小渕優子元経産大臣や世耕弘成元経産大臣など錚々(そうそう)たるメンバーを送り込んで応援しています。

当初、自民党幹部は5つの補選を全勝できると楽観視していました。そして、5月のサミットでの岸田政権の支持率回復を受けて、解散・総選挙を行ない、岸田長期政権を狙おうとしていました。

しかし、自民党内の世論調査で、大分、千葉、和歌山の補選も厳しい戦いになることがわかったのです。もし、この3つの補選を落とすと、長期政権どころか岸田降ろしになる恐れがあります。2021年の参院長野補選・参院広島再選挙と横浜市長選で自民党が敗れて『菅(義偉)降ろし』が起きたのと同じことが起こりかねないのです」

参院大分補欠選挙は、自民党の小渕優子元経産大臣や立憲民主党の泉 健太代表ら大物が応援に駆けつける重要選挙だ 参院大分補欠選挙は、自民党の小渕優子元経産大臣や立憲民主党の泉 健太代表ら大物が応援に駆けつける重要選挙だ

岸田文雄総理にとって、今回の補選は政権の命運がかかっている重要な選挙なのだ。

「千葉5区は、『政治と金』問題(政治資金規正法違反)を起こした元自民党の衆議院議員の辞職による選挙のため、激戦が予想されています。

和歌山1区は、自民党公認の門 博文氏と、日本維新の会公認の林 佑美氏、共産党公認の国重秀明氏、政治家女子48党の山本貴平氏の戦いですが、奈良県知事選で維新が勝った勢いに乗って和歌山も獲(と)るのではないかといわれています」

そして、前号でも少し紹介した山口2区と4区はさらに注目だ。

「山口2区は、自民党公認の岸 信千世氏と元法務大臣で野党統一候補の平岡秀夫氏の一騎打ち。

岸氏は、世襲批判と家系図問題がまだまだ尾を引いているようです。

一方で、平岡氏は岸田政権の問題点が凝縮されているのが山口2区だと強調しています。選挙区には岩国基地があり、岸田政権が保有を閣議決定した敵基地攻撃能力を行使した場合、基地周辺の住民がミサイルで反撃を受けて被害に遭う恐れがあること。

また計画中の上関原発の問題。旧統一教会問題。さらに世襲問題。とても争点がハッキリしています」

さらに、安倍晋三元総理の死去に伴う山口4区の補選。

「山口4区は、自民党公認で安倍昭恵氏らが擁立した吉田真次氏と、立憲民主党公認のジャーナリスト・有田芳生氏、政治家女子48党の渡部亜衣氏、無所属の竹本秀之氏と大野頼子氏の戦いです。

吉田氏は下関市議でしたが、いまいち名前が知られていません。知名度でいえば有田氏が圧倒的に上です。

また、山口4区の下関市は自民党の安倍晋三派と林芳正派が対立していて『林派の市議が動いていないようだ』という話を聞きます。

それはポスターを見ると一目瞭然で、安倍派の下関市議の事務所には吉田氏と岸田総理のツーショットのポスターが張ってあるのに、林派の下関市議の事務所には、岸田総理の単独ポスターしか張っていないんです。安倍派と林派では、吉田氏の応援にかなりの温度差があるようです。

当初、山口は『自民王国』なので楽勝だと思われていましたが、もしかしたら2区も4区も厳しい戦いになるかもしれません。自民党は5つの補選すベてで楽観視できない状態です」

山口4区の自民党下関市議の事務所には、吉田真次候補と岸田総理のツーショットポスターを張ってあったりなかったりと微妙な温度差がある 山口4区の自民党下関市議の事務所には、吉田真次候補と岸田総理のツーショットポスターを張ってあったりなかったりと微妙な温度差がある

統一地方選・後半戦と5つの補選は4月23日に投開票を迎える。その結果次第で、岸田政権の運命が変わってしまうかもしれないのだ。

自分が住んでいる地域の選挙だけでなく、今回紹介した選挙区はぜひとも注目してほしい。