5月27日にCNNは、ロシアの銃器メーカーがウクライナ戦争での実戦使用からの戦訓を取り入れた、すでに最前線に投入したと報じた。戦争では両軍の戦闘機や戦車の性能比較が盛んに行われる。しかし、最後は軍用小銃を持つ歩兵同士の戦闘で勝敗が決まるのだ。
そのロシア軍勝利の鍵を握るAK12の祖先はAK47で、口径7.62mm×39mmだ。その弾の威力は実際に使用した兵士に聞いたところ「一発で敵兵は倒れる」と話した。一方、米軍が使用するM16の弾、5.56mm弾は、3発命中させないと致命弾にならないと言う。
AK12は5.45×39mm弾となり口径が小さくなったが、問題はその弾の威力だ。アフガン派遣の実戦で、AKの7.62mm弾と5.45mm弾で撃たれた経験のある元米陸軍82空挺師団・飯柴智亮大尉はこう語る。
「どんな強力な弾丸でも『当たらなければ意味が無い』です。弾は口径が大きくなればなる程、反動も大きくなります。なので、撃ちやすさが減少し、命中精度が落ちます。5.56mm弾と5.45mm弾を実際に撃ち比べましたが、5.45mm弾の方が格段に撃ちやすかったです」
すると、AK12は最前線の戦訓から改良がなされた。まず「二点発射モード」が除外。これは引き金を引くと二連射、ババンと二発続けて弾が出る仕組みだ。
「発射機構が単発や連射以外に二連射バーストを加えると、トリガーメカが複雑になり、故障の原因になります。パーツ点数が倍になるんです。それが最前線で多発し、除外されたのでしょう」(飯柴氏)
さらに記事には『タス通信によると、AK12は照準器や照明器具、レーザー照射器、消音・消炎装置といった追加パーツの取り付け機構を複数備える』と書かれている。現在の西側の軍用ライフルはすでに、多種多様の『早くて正確、簡単により遠くの敵兵を狙える』光学照準器を装備している。
日本の陸上自衛隊は2012年に、オーストラリアで開催される国際陸軍射撃大会に89式小銃と裸眼と気合いと根性で初参戦し、15カ国中14位と惨敗。しかし、2018年には光学照準器を89式小銃に搭載し、気合いと根性で「戦闘射撃部門」で3位となった。同年、スコープ搭載の狙撃銃部門では世界一を獲得した。はたしてロシア軍兵士は、AK小銃と裸眼だけで戦っているのか?
「まず、自動小銃を使いやすくするために踏む手順を説明します。
相手を狙う際に、最初に小銃のストックを肩に付けますが、兵士によって体形が違います。そこで、上下に長さを調節できるモノにストックを変える。ストック上部は顔の頬付けがしやすく、グリップは手で握りやすくします。
これで小銃が狙いやすい姿勢で保持できます。狙いをより正確にするため、仕上げに銃自体にピカティニイレールを付け光学照準機を搭載します。お勧めは低倍率、4倍(100m先が25m先のよう見える)のコンバットスコープ。その内部はシンプルな十字線が入り、敵兵に合わせ撃つのです。
しかし、これら光学照準器などのアクセサリーは高価で、小銃より高い場合が多く、そう簡単には買えません。しかし、光学照準器が最も性能を発揮する中距離150m~550mでは付けた方が有利です」(飯柴氏)
ウクライナ軍兵士のYouTubeに上がる動画を見ていると、サイレンサーから光学照準器各種がフル搭載されているのが散見できる。
「一瞬、米軍兵士かと見間違うほど、ウクライナ軍兵士の銃器とアクセサリー類は完全に西側製品である場合が多いです」(飯柴氏)
このロシア軍の「AK12改」に対抗するには、どの西側軍用小銃に高価なアクセサリーを搭載すれば、ウクライナ軍は勝てるのだろうか?
「AK12に今、確実に勝てるのは、NGSW(Next Generation Squad Weapon:次世代分隊火器)に選定されたSIG社のXM5(MCX-SPEAライフル)とXM250(SIG-LMG軽機関銃)です。口径6.8mm弾で、AK47の大口径7.62mm弾の威力とM16の高速5.56mm弾の良い所取りの弾丸です。
アクセサリーはNGSW-FCのデバイスである「XM157」搭載します。これは火器管制システム付きで、対戦車誘導ミサイルに近い照準装置です。6.8mm弾の有効射程ならば、初弾から命中弾をどんな距離からでも敵兵に撃ちこめます」(飯柴氏)
しかし、これは2023年10月から米軍に納入が開始される。ウクライナ軍に供与されるのはさらに先となるだろう。それまでは最前線では、西側供与の高価なアクセサリーをAK小銃などに搭載して凌ぐしかない。