2024年アメリカ大統領選。各党候補はほぼ決まり!!2024年アメリカ大統領選。各党候補はほぼ決まり!!

2016年に共和党のトランプが大統領になり、2020年に民主党のバイデンが大統領になり、2024年には第47代大統領選挙があるけど、結局このふたりの戦いになりそう! でも、どちらが勝つにせよ、世界の混乱は不可避!?

* * *

■刑務所からホワイトハウスへ

今年11月に次期大統領選挙を控えているアメリカ。「今回の選挙はアメリカ政治史上、極めて重要かつ異例なものになるでしょう」と語るのは、米現代政治が専門の国際政治学者で上智大学教授の前嶋和弘氏だ。

「まず異例なのが、すでに共和党はトランプ、民主党はバイデンと、各党の大統領候補が、ほぼ確定している点です。

大統領選は1月15日にアイオワ州で行なわれる共和党の党員集会を皮切りに、両党の予備選挙がスタートします。しかし、共和党は再選を目指すトランプが、支持率でライバルを圧倒的に引き離しており、フロリダ州知事のロン・デサンティスをはじめとした他候補に勝ち目はもはやありません。

そのため、いつもなら注目を集める共和党候補のテレビ討論会にもトランプは出演せず、『勝ち目のない候補同士で激論を交わす』というシラケきった光景になっていて、片やトランプは別の番組に単独で出演して、取り巻きのような司会者を相手に好き勝手にしゃべっています。

一方の民主党側も、アメリカでは伝統的に『政権与党が大統領選で現職以外の候補を立てると本選で負けるケースが多い』ため、事実上、現職のバイデン一択となっており、ほかの候補が選ばれることはまずありえない状況です。

つまり、本来なら大統領選の第1ラウンドである予備選が、実質的な意味を持たない茶番になっているのです」

ふたつ目の異例は、トランプの犯罪を巡る裁判の存在だ。

「彼は現在、①2021年1月に起きた連邦議会襲撃事件の扇動、②大統領退任後の機密文書の不正な持ち出し、③ジョージア州で2020年の大統領選挙の結果を不当に覆そうとした疑い、④不倫疑惑のもみ消し、という4つの犯罪の被告として検察に起訴されています。

ちなみに、アメリカの憲法では、裁判で有罪判決を受けて収監されても、大統領選の候補になれます。実際、1920年にはスパイ容疑で投獄されていたユージン・デブスというアメリカ社会党の候補が刑務所の中から選挙運動をして、一般投票で3%ほど票を獲得した例もあります。

仮にトランプに有罪判決が下され、彼が刑務所に収監されるような事態になっても、『共和党の大統領候補が刑務所からホワイトハウスを目指す』ことになりますし、11月の本選に勝利すれば『新大統領が刑務所にいる』という異常事態にもなりかねません」

とはいえ、さすがのトランプでも有罪で刑務所に、となれば勝ち目はないのでは?

「それが、そんなこともないんです。そもそも、トランプ支持者の中には『バイデンが勝った2020年の大統領選挙結果は不正に盗まれたものだ』と本気で信じている人が多いので、彼への犯罪の容疑も陰謀や妨害だと考えます。言ってしまえば、彼らにとってトランプは『現職の大統領』。

そんなトランプが収監されれば、『バイデン陣営の陰謀だ!』と、その支持熱がいっそう激化するでしょう。

議会襲撃を扇動したとして、コロラド州最高裁がトランプの予備選出馬の資格剥奪を決定しましたが、これもむしろトランプ支持者の結束力を強めるように見えます。

実際、トランプが起訴されたり、裁判に出廷したりするたびに、彼への支持が高まるという現象が起きていて、彼の裁判費用を集めるキャンペーンには、トランプの顔写真入りマグカップやTシャツの返礼品を目当てに、巨額の寄付金が集まっているそうです」

■どっちが勝っても混乱は起きる?

すでに両党の候補がほぼ決定しており、トランプが有罪になってもダメージがないとすれば、あとは11月の本選、「バイデンvsトランプ」の一騎打ちを残すのみ。「現時点ではトランプが大きくリードしている」という声もあるが?

「実際には五分五分で、私はかなりの大接戦になるだろうとみています。アメリカの大統領選挙は51の選挙区で行なわれますが、大部分では最初から共和党支持か民主党支持かほぼ決まっているため、それ以外の『接戦州』と呼ばれる6つの州での勝敗が、最終的な選挙結果を左右します。

現在の世論調査ではこれらすべての州でトランプがリードしていますが、11月の本選までには時間があり、接戦州での戸別訪問も含めた両陣営による熾烈な票獲得競争は、むしろこれからが本番ですから、まだまだ予断を許さない状況です」

その結果、もしトランプが大統領に返り咲けば?

「アメリカは前回のトランプ政権時代以上に徹底した〝アメリカファースト〟に逆戻りするでしょう。ウクライナ支援の打ち切りやNATOからの離脱も主張していますし、地球温暖化対策に背を向けて、パリ協定からも離脱、容赦ない不法移民排除やメキシコ国境の封鎖など、国際秩序に大きな混乱をもたらすことは間違いない。当然、日本もその影響は免れません」

ならば、バイデンの健闘に期待するしかないか......。

「残念ながら、そちらも安心はできません。仮にバイデンが勝てば、政策は基本的に現状維持ということになりますが、トランプ支持者は今回も選挙結果に納得せずに、再び連邦議会を襲撃し、最悪の場合、アメリカがそのまま内戦状態に陥るという可能性もある。

この10年弱で、社会が修復不可能なほど分断されてしまった今、トランプとバイデンのどちらが勝っても混乱は避けられないというのが、今のアメリカが抱える悲しい現実かもしれません。

しかも、トランプは77歳、バイデンは81歳と、ふたりとも高齢です。もしバイデンが勝てば次の任期終了時は86歳ですよ。まず両者、心身健康なまま選挙活動ができるのか。盤面が動くときがあるとすれば、それはどちらかがケガしたり、健康を損なったりしたときかもしれません」

現状どっちが勝っても世界に波紋は広がるだろう。それなら11月までの2024年を大切に生きるしかないか(涙)。

川喜田研

川喜田研かわきた・けん

ジャーナリスト/ライター。1965年生まれ、神奈川県横浜市出身。自動車レース専門誌の編集者を経て、モータースポーツ・ジャーナリストとして活動の後、2012年からフリーの雑誌記者に転身。雑誌『週刊プレイボーイ』などを中心に国際政治、社会、経済、サイエンスから医療まで、幅広いテーマで取材・執筆活動を続け、新書の企画・構成なども手掛ける。著書に『さらば、ホンダF1 最強軍団はなぜ自壊したのか?』(2009年、集英社)がある。

川喜田研の記事一覧