検察特捜の本丸は西村前経済産業大臣か? 生まれ変わる自民党の新しきリーダーはどうなるのか.........(写真:AFP=時事) 検察特捜の本丸は西村前経済産業大臣か? 生まれ変わる自民党の新しきリーダーはどうなるのか.........(写真:AFP=時事)
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT OpenSourceINTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく!

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――安倍派の政治資金パーティー収入を巡る裏金事件で、次々と自民党実力政治家とその秘書が検察特捜に呼び出されています。重大局面であります。

佐藤 何が重大局面かというと、元NHK記者で故・安倍元総理に近かった岩田明子さんが、「安倍さんがパー券のキックバックを止めさせた」と言っていましたよね?

――ABEMA TIMESの記事によると、岩田氏はこう発言しています。

「8年近く派閥を離れていたので、当初は目の前のことに追われていた。しかし2022年2月に"そういえばお金はどうなっているんだ?"とこの件に関して会計責任者を呼び出し、"このような方法は問題だ。ただちに直せ"と叱責した。

2022年4月に改めて"あの件は止めたんだろうな"と事務総長らにもクギを刺したところ、翌月以降の派閥パーティーでのキックバックはなくなった。安倍元総理は選挙を終えてから深掘りするつもりだったが、その2カ月後に亡くなってしまい、話がうやむやになった」

佐藤 それが決定的にヤバいんですよ。なぜなら「止めさせた」ということは、違法性認識を持っていたということだからです。だから止めたわけです。違法だと分かっていたということは、これはビンゴですよ。

――確かに。

佐藤 だから、この発言は今回のひとつの鍵になるんですよ。

――派閥の解体が一気に進んでしまうのですか?

佐藤 安倍派のほうはそうでしょうね。ただ、実はそんなにきつくないと思います。裏金の出どころは政治家が管理しています。だから、各政治家の問題になるわけです。

しかし、二階派はその金がどこに行ったか分かっていません。その貯め込んだ裏金を何に使っているか把握していないんです。だから、二階派のほうがきついはずです。

――安倍派よりも二階派が炎上してしまう......。

佐藤 絶対にヤバいのは二階派ですね。派閥で大金をガメて、どこにいったか分からないんですから。しかも数千万単位。過去5年の累計では億単位になるでしょう。それがどこに行ったか分からないなんて、普通考えられないですよね。

――はい。

佐藤 それから、もうひとつヤバいのは西村前経済大臣です。今回は呼ばれていませんが、不思議に思うのは、西村氏の疑惑で報じられているのは10万円の話ですよね?

――衆院選公示日に医療法人から10万円の寄付を受けましたが、西村前大臣は「道義的見地から返金した」と述べています。

佐藤 それはもっと大きなタマが隠れているからでしょうね。あの人はパーティーをやると言って、コロナで中止しました。

――はい。

佐藤 パーティーを開催していないのにパーティー券を売って、その金をもらっていいのかという話です。検察から見れば違法献金ですよ。

――なるほど!!

佐藤 それなら、パーティー券の収入だけで相当な金になります。違法献金を受け取っていたら、ただでは済みませんよ。

――4000万円のキックバックをもらっている大物議員たちが、一気に小物になってしまう。

佐藤 そうです。今度は億単位の裏金。要するに違法に献金を受けていたという話です。

――検察特捜は本気を出しますね。

佐藤 そういう疑惑が安倍派には隠れています。そんなところに岩田さんが、安倍さんを守るべきと思って言ったことが、「違法性の認識を持っていた」証明になっています。検察は「御馳走様、岩田大名神」となりますよ。

――完璧な善意のオウンゴールになってしまった。

佐藤 「チーム安倍」のオウンゴールですね。純粋に自分が知っていることを言っただけなんでしょうけどね。安倍さんは良い人であって、皆、違法性の認識があって、これはヤバいと止めさせたわけです。しかしそれをまた戻したとなれば、どうなると思いますか?

――悪事だと分かって、悪い事をすることとなります。

佐藤 実行時に違法性を認識していなければ、法律違反と取れません。しかし、違法だと知りながらやると、これは重いわけです。

――全ては安倍さんが悪いという方向でまとめて終わらそうとしたのが前提でしたね。

佐藤 そうです。だから、皆が違法性を認識していたことになります。これはかなりヤバいんです。報道によると今回、安倍派のパーティー券を巡る事件で、実力者「五人組」や事務総長経験者などの政治家の立件を検察は見送るとのことですが、それでも安倍派は再起不能の打撃を受けたのですから、検察の目的は十分に達せられたことになります。

――この件で仮に、国会議員が起訴された場合、実刑になることがあるでしょうか?

佐藤 執行猶予はつきますが、5年間の公民権停止になります。すると、その5年間で2回選挙に出られません。

――完璧に過去の人となってしまう。

佐藤 5年の公民権停止期間を経て、国会に戻ってきたのは鈴木宗男さんくらいです。小野寺五典さんは3年で短かったけど、戻ってきました。

――鈴木先生の胆力はすごいですからね。ということは、安倍派パー券裏金問題のこれからの展開から目が離せませんね。

佐藤 そういうことですね。

次回へ続く。次回の配信は2024年1月26日(金)予定です。

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佐藤優

佐藤優さとう・まさる

作家、元外務省主任分析官。1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞

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小峯隆生

小峯隆生こみね・たかお

1959年神戸市生まれ。2001年9月から『週刊プレイボーイ』の軍事班記者として活動。軍事技術、軍事史に精通し、各国特殊部隊の徹底的な研究をしている。日本映画監督協会会員。日本推理作家協会会員。元同志社大学嘱託講師、筑波大学非常勤講師。著書は『新軍事学入門』(飛鳥新社)、『蘇る翼 F-2B─津波被災からの復活』『永遠の翼F-4ファントム』『鷲の翼F-15戦闘機』『青の翼 ブルーインパルス』『赤い翼アグレッサー部隊』『軍事のプロが見た ウクライナ戦争』(並木書房)ほか多数。

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