二階俊博 『ナンバー2の美学 二階俊博の本心』(2020年) ブックマン社[林 溪清/著、大中吉一/監修] 本人へのインタビューと周辺取材で書かれた評伝、講演録などがまとめられた一冊。二階の政治団体が5000冊も買い上げたことで話題に。監修者は『月刊公論』主幹 二階俊博 『ナンバー2の美学 二階俊博の本心』(2020年) ブックマン社[林 溪清/著、大中吉一/監修] 本人へのインタビューと周辺取材で書かれた評伝、講演録などがまとめられた一冊。二階の政治団体が5000冊も買い上げたことで話題に。監修者は『月刊公論』主幹

近年では政治家の発信といえば、メディア出演かSNS、ブログ。しかし実は、まとまった分量で買った人(か、もらった人)だけに届けられる書籍にこそ、意外なキャラや「ほかでは言えない話」が紛れ込んでいる。ここではあまたある「政治家本」の中から、特に注目すべき作品を旧作中心に紹介!!

※文中敬称略。

* * *

■二階センセーは〝ナチュラルボーン幹事長〟

自民党の二階俊博元幹事長は2月14日、自身の資金管理団体が収支報告書に記載していなかった、いわゆる〝裏金〟の使途を公表。2020年からの3年間で、なんと約3470万円分もの書籍(17タイトル・2万7700冊)を購入していたことが判明した。

最多冊数は『ナンバー2の美学 二階俊博の本心』(2020年)の5000冊。また、同書を監修した大中吉一が主幹を務める雑誌『月刊公論』2020年2月号(二階と小池百合子東京都知事の対談を収録)も、2000冊購入されていた。

ほかにも、和歌山放送報道制作部編著の『地元メディアが見た 二階俊博 力の源泉』(2020年、創藝社)を3000冊も買い上げるなど、気になる点は多いが、今回の主題はそこではない。

先述した『ナンバー2の美学』によれば、二階は和歌山県立日高高校在学時、同校の甲子園初出場に際して応援団創設に奔走し、その功績が認められて生徒会長選挙に圧勝。以来、一度も「選挙」に落ちたことがないという。さらに、〝幹事長前夜〟を思わせるエピソードも(以下、引用)。

〈俊博が(中略)奔走したのが、なんと校内の環境整備である緑化運動だった。校長に直談判し、授業料値上げ反対運動に同調しない代償として、その緑化運動への許可を取り付けたのだ〉

その話が地元紙に良くない形で書かれそうになると、

俊博は(中略)紀州新聞の社長に直談判に出かける。

「(中略)もしどうしても書くなら当方にも考えがあります」

「どんな考えだ」

「新聞の不買運動をやります」

 このやり取りの後、(中略)記事の掲載は取りやめになったという〉

高3にして超ハードネゴシエーター。まさに〝ナチュラルボーン幹事長〟!

このように、普段あまり多くの人の目に触れることがない「政治家本」には、永田町の中心に陣取るセンセーたちの意外なキャラや逸話が隠されている。一気にご紹介!

* * *

次期首相待望論が続く石破 茂元防衛大臣の『国防』(2005年)には、軍事オタクの面がにじみ出た一節がある。

〈私は(防衛庁)長官として、できるだけ現場へ出たいと思っていました。F-15や、F-2戦闘機にも実際に乗ったし、90式、74式戦車にも自分で乗って操縦しました。習志野空挺団では、十一メートルの高さから飛び降りる訓練もしました。人間が恐怖を感じる高さは十一メートルで、(中略)私は二回もそこから飛び降りてみた。自分でも馬鹿じゃないかと思います〉

同じく次期総裁候補の一角、河野太郎デジタル大臣は、かつて筋金入りの反原発派として、自党も他党も官僚もマスコミも批判しまくっていた。福島第一原発事故の翌年に刊行された元日本経済新聞記者・牧野 洋との共著のタイトルは、『共謀者たち 政治家と新聞記者を繫ぐ暗黒回廊』

〈民主党は、電力会社の労働組合から(中略)さまざまな支援を受けています。自民党の議員のなかには、実質的に電力会社から献金を受けてきた者が少なからずいます。(中略)その裏では、経済産業省が、核燃料サイクルの実現を至上の命題とした政策を遂行しようと、あらゆる手だてを尽くしてきました。しかも、原子力発電の邪魔になるような自然エネルギーを、徹底的に妨害し続けたのです〉

ハードパンチャー!

初の女性総理の座を狙う高市早苗経済安全保障担当大臣は政治家になる前、米民主党議員スタッフとしての勤務経験を基に、日本政治の遅れを指摘した『アズ・ア・タックスペイヤー 政治家よ、こちらに顔を向けなさい』(1989年)を上梓。ただ、その筆致は等身大の20代女性という感じで、かなりポップだ。

〈話は脱線しますが、私の個人的好みを言うと、(中略)上院のテッド・ケネディのほうが何倍も素敵な人なのです。(中略)私も一回抱きしめられたとき、正直言って......、実はとても嬉しかったものです。(中略)プンといい匂いもしました。さすがプレイボーイ〉

ほかにも、日本の国際派代議士がワシントンで日本製のコンドームを土産として配りまくっているという噂話など、食いつきやすい話題が多い。

立憲民主党・辻元清美代表代行は、実は今も続くピースボートの創設メンバーのひとりだ。議員になる前に上梓した『清美するで!! 新人類が船(ピースボート)を出す!』(1987年)では筑紫哲也や浅田 彰、本多勝一といった文化人、『ありのまま主義宣言っ! うどん屋の娘に国境はいらない』(1990年、芸文社)ではなんと中島みゆきと対談。当時の注目度の高さがうかがい知れる。

自民党・平沢勝栄元復興大臣の『明快!「国会議員」白書』(2000年)も怪作。冠婚葬祭でひたすら顔と名前を売る国会議員のリアルな日常などが描かれているが、特に驚くのが公明党への敵意だ。11章目の見出しは「迫りくる公明党の日本支配」

〈自民党幹部や党公認候補が、「小選挙区は自民党候補へ、しかし、比例区は公明党へ」と選挙カーの上から絶叫する光景ほど、醜悪な姿はほかになかったのではないだろうか。まさに公明党という覚醒剤に骨がらみになった姿だ〉

〈一度打ってしまうと依存体質になって、(中略)ボロボロになっていく〉

ここからは番外編として、元首相ふたりを取り上げる。

安倍晋三元首相が小泉内閣の官房長官だった2006年4月に刊行された財界人や保守系知識人との対談集『安倍晋三対論集 日本を語る』では、改憲へのすさまじい執着が繰り返し語られている。

〈現行憲法を「不磨の大典」のごとく祀り上げて指一本触れてはいけないというのは一種のマインドコントロール〉〈現行憲法はニューディーラーと呼ばれた左翼傾向の強いGHQ内部の軍人たちが――しかも憲法には素人だった――短期間で書き上げ、それを日本に押し付けたもの〉

しかし、歴代最長の首相在任記録をもってしても、その悲願は達成できなかった。

そして最後は、数々の舌禍事件を起こしてきた森 喜朗元首相の『日本政治のウラのウラ 証言・政界50年』(2013年)。

サービス精神旺盛な森は、聞き手の田原総一朗に乗せられ(?)、暴露話を連発。長嶋一茂を放出したヤクルトの球団幹部(書籍内では実名)が「せいせいした」と言った話、国会内の乱闘で骨折したはずの女性議員(書籍内では実名)が部屋に入ったら松葉杖をついていなかった話......。

特に生々しいのが、過去の選挙で公然とカネがバラまかれていたとの証言だ(森は「うちではやったことがない」と前置きしているが)。

〈直接、有権者に渡しちゃうのよ。(中略)山を越えて集落に行くでしょ。(中略)そこにバーッと村人が並んでいるんです。(中略)全員に札束を渡すんだから〉

〈ハマコーこと浜田幸一が地元の千葉県で、八幡製鉄(今の日本製鉄)の寮ができた時に、一家族一万円ずつ配ったというからね。(中略)しかも、封筒に差出人の名前が書いてあったというから。警察はなぜ摘発しないのかと言う人がいるけど、そんなことをしたら町中の人間を全部豚箱に入れなきゃいけない(笑)〉

森センセーはやっぱりレベチでした!