岸田内閣の支持率も、自民党の支持率も危険水域。「今、解散・総選挙をしたら政権交代だ」という声まで聞こえ始めたという。では、その可能性はどれくらいあるのか。そのシナリオはどういったものなのか。野党集結&解散・総選挙の実現性を3人の専門家に聞いた!
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■立憲・泉総理ではなく、維新・馬場総理誕生!?
自民党の政治資金パーティ裏金事件は、安倍派の池田佳隆衆議院議員が逮捕され、現職の国会議員82人が収入の一部を記載していなかったという異常事態になっている。
その影響か、2月の時事通信の調査では、岸田文雄内閣の支持率は16.9%、自民党の支持率も16.3%と急落。内閣支持率は、2012年の自民党政権復帰後で最低だ。
また、毎日新聞の調査では、自民党と立憲民主党の支持率が共に16%で、日本維新の会が13%、れいわ新選組が6%、国民民主党が5%などと野党の支持率が急上昇。
この結果を受けて「今、野党が集結して次の総選挙に臨めば、政権交代ができるのではないか」という声まで出始めているのだ。
専門家たちはどう見ているのか。ジャーナリストの鈴木哲夫氏が解説する。
「今、多くのマスコミは『内閣支持率は過去最低。自民党の支持率も下がっている』と発表しています。すると『もう自民党じゃダメだ。政権交代だ』という流れになるのが普通だけれども、そうなっていない。
なぜなら『2009年の政権交代のときは、民主党という大きな政党があったけれども、今は野党がバラバラでまとまっていないから』と言うのです。
ただし、2009年ではなく、1993年の政権交代では日本新党、日本社会党、新生党などの非自民・非共産の8会派が集まって『細川護煕連立政権』ができました。なぜ、バラバラの会派が集結できたのか。
もちろん、8つの会派の政策がすべて一致するはずがありません。政策は違っていても『自民党政権を一度終わらせましょう』という一点だけでまとまったんです。それをどう表現したかというと『政治改革』です。
当時は、政治家などに未公開株を賄賂として譲渡したリクルート事件など、政治とカネの問題で自民党に批判が集中していました。現在と同じような状況です。
そこで『腐敗した政治を改革しなくてはいけない』ということで機運が高まり、政権交代が実現しました。ですから、政策はバラバラでも政権交代という一点だけで野党が集結することはできるはずです」
そして、鈴木氏は今、その下地ができつつあるという。
「立憲民主党の泉 健太代表は、2月4日の党大会で『政権交代を必ず成し遂げる』『部分的でも政策が合えば野党間の連携を進める』と一歩踏み出した挨拶をしました。ですから、今度は日本維新の会や国民民主党などに決断が迫られているわけです。
そして、この野党集結を進めるためには、立憲民主党はもう一歩踏み込まなくてはいけません。細川連立政権発足時、細川総理の所属する日本新党は最大会派ではなかった。新生党や日本社会党のほうが議員数が多かった。だから、新生党の羽田 孜氏や日本社会党の山花貞夫氏が総理になってもよかったんです。でも、細川氏を選んだ。
その後、自民党、社会党、新党さきがけが政権を奪取したときも、一番多い自民党が後ろに回って社会党の村山富市氏を担いで集結した。
同じように、今回も議員数が多い立憲民主党が後ろに回って、例えば泉氏以外の総理でもいいという選択肢を示すなどすると、野党集結が一気に進む可能性があります。そして、その先には政権交代も見えてくるでしょう」
ジャーナリストの藤本順一氏は、政権交代に向けての秘策があるという。
「過去を振り返ると、93年の細川政権が発足する前に実力者である小沢一郎氏や羽田 孜氏が自民党を離党して新生党を結成しました。そして、総選挙後に日本新党などと連立を組んで政権交代をします。
野党が政権交代を目指すのであれば、このパターンが一番現実的かもしれません。今の自民党に不満を持っている自民党議員たちと野党が連携する。
例えば、昨年12月の『次の総理になってほしい人』という共同通信の調査で1位になった石破 茂氏。石破氏は前回の自民党総裁選に出馬することができず、党内でも冷遇されています。
そんな石破氏が反自民・反麻生的な勢力を10人くらい連れて自民党を離党し、新党を結成する。そして、そこに野党が集まるというシナリオです。
やはり、次の首相の顔が見えるというのは強い。国民人気の高い石破氏なら、政権交代の顔としてアピールできるでしょう。
また、東京都知事の小池百合子氏が国政に復帰すると、自民党には脅威になります。野党が過半数を取った場合、小池百合子氏を首班指名するという約束をして自民党と戦う。そうしたことができれば、政権交代は起こりえます」
■小選挙区で一騎打ちに持ち込めれば勝てる!
「私の中では、すでに政権交代はしています」というのは、前明石市長の泉 房穂氏だ。
「税金や社会保険料などの国民負担は増えているのに、政治家はパーティで裏金をつくるなど私利私欲に走っている。私に言わせれば、与党も野党も関係なく、国民は今の政治家に対して怒っているんです。与野党共にNOなんです。
国民の負担を減らすには政策の転換が必要です。政策を転換するには、衆議院議員465人の過半数である233人を当選させる必要があります。そして総理大臣を指名する。そのためには、与野党対決ではなく、『国民の味方チーム』vs『古い政治家のチーム』という構図にして、一騎打ちに持ち込めばいい。
この国民の味方チームはカラフル連合で、古い政治家チームを真っ黒だとすると、こちらは黒以外の白でも赤でも黄色でもいい。野党や与党から来る人でも、政党に属していない人でもいい。『救民内閣』という名の下に国民の味方、国民の立場に立った人が集まってくればいいんです。
私は明石市長時代に全政党を敵にして圧勝しました、また、昨年の兵庫県三田市長選や埼玉県所沢市長選など、私が応援した無所属新人候補も圧勝して当選しています。
ですから、総選挙でも『国民の味方』と『古い政治家』という対立にして小選挙区で一騎打ちに持ち込めば圧勝できるはずです」
しかし、候補者選びなど準備期間が必要なのでは?
「準備期間は解散してからで十分です。2005年の郵政選挙のとき、ブームが起こったのは小泉純一郎総理(当時)が解散をしてからでした。自民党の多くの人が『今解散したら自民党は負ける』と言っていましたが、小泉氏が『郵政民営化を国民に問いたい!』と言ってなだれ現象が起きて自民党が圧勝した。
2017年の希望の党ブームのときも衆院解散時に小池百合子氏が民進党の前原誠司代表(当時)と組んでからなだれ現象的にブームになりました。ただ、その後の『排除します』発言で失速しましたが......。ブームは一瞬で起きます。政治ってそんなもんなんです。
だから、私が書いたシナリオどおりに289小選挙区の候補者をきれいにすみ分けできれば、その瞬間に勝ちです。私からしたら、すでに政権交代は終わっています」
岸田総理は、このままでは9月末の自民党総裁選での再選はないといわれている。そのため、4月の訪米後や6月の通常国会会期末に解散をするのではないかともいわれている。もしかしたら、このときに〝野党集結&政権交代〟が起こるかもしれない。