「人が多すぎ」「物価が高い」「インフラが老朽化している」...... こうした声に都知事候補たちはどう答える? 「人が多すぎ」「物価が高い」「インフラが老朽化している」...... こうした声に都知事候補たちはどう答える?

東京都知事選が始まった。今回は史上最多の候補者による大乱立選挙だ! 彼らの訴えは届くのか? 都民はどんな公約を望んでいるのか? そこで大アンケートを行なって有権者の悩みを聞いてみた。そこから浮かび上がった真実とは?

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■物価、訪日観光客、地震対策などが関心事

東京都知事選がスタートした。それぞれの候補者が独自の公約を掲げ、現在、選挙運動を行なっている。

例えば、小池百合子候補の公約は「無痛分娩費用に対する助成制度」や「保育料の無償化を第1子まで拡大」など。蓮舫候補は「神宮外苑地区の再開発見直し」や「多子世帯への家賃補助制度」などだ。

では、その公約はどれくらい都民の気持ちを汲んだものなのか。週刊プレイボーイは都内在住の18歳から99歳までの男女200人にアンケートを行ない、都民が抱えている問題を聞いた。

この結果を踏まえて『都政新報』の服部篤紀記者に東京都の問題を解説してもらった。

「まず『物価が高い』と感じる人が多いのはわかりますが、コンビニや飲食チェーン店などの価格は、全国的に値上がりをするので、東京の問題として影響するのは、『家賃が高い』ことだと思います。

東京のマンションの価格は、神奈川県や千葉県、埼玉県などの近隣県と比べて2倍以上というデータがあります。それだけ不動産価格は高騰しているので、当然、賃貸物件の家賃も高くなっています。

少し話は飛びますが、このアンケートの中の子育てに関する悩みで『学校のいじめ対策が不十分』以外あまり問題になっていない理由は、小池都政の2期目の政策が〝子育て世代へのバラマキ〟が中心だったからだと思います。

代表的なところでは、都内在住の0歳から18歳までの子供に月額5000円を支給する『018サポート』、高校3年生までの医療費助成、私立高校を含めた高校授業料の無償化などです。これは子育て世代には一定の効果があった政策でした。

ただ、小池都知事は子育て政策には力を入れたけれども、住宅問題までは手が回らなかった。それが『物価が高い』という悩みにつながったのだと思います。

また、住宅問題に手をつけたとしても、結局、住宅補助などのバラマキ政策になってしまいます。都庁の職員の中には『バラマキ政策はやめどきが難しい』と危機感を抱いている人もいるので、住宅問題について誰がどんな公約をしているかは注目です。

明治神宮外苑のイチョウ並木。日本イコモス(国際記念物遺跡会議)は、神宮外苑の再開発の中止を求めている 明治神宮外苑のイチョウ並木。日本イコモス(国際記念物遺跡会議)は、神宮外苑の再開発の中止を求めている

次に『再開発などで自然がどんどん少なくなっている』と感じている都民が多いようですが、これは明治神宮外苑の再開発問題が念頭にあると思います。

ただ、これは東京都も事業者も適正な手続きを踏んだもので、事業者は樹木を伐採しても新たに植樹して、最終的には緑は増えるという説明をしています。でも、植樹された木は小さいので、緑の充実という意味では少なくなるのかもしれません。

ちなみに、東京都の見解としては『都全体では緑はほぼ横ばい』としています。しかし、一般的に緑で覆われている土地の面積の割合を示す『緑被率』ではなく、東京都独自の『みどり率』という数値を使って『ほぼ横ばい』と言っています。

何が違うかというと、緑被率は航空写真のように上から見て平面にどれくらい緑があるかを測ったものです。それに対して、みどり率は緑のほかに公園区域や川などの水辺の環境面積も加えて換算されます。

雷門などの東京の名所には連日、訪日観光客が訪れている。仲見世などはかなりの混雑だ 雷門などの東京の名所には連日、訪日観光客が訪れている。仲見世などはかなりの混雑だ

そして『訪日観光客の多さに戸惑っている』ですが、こうした都民の感覚は小池都知事を含め東京都は把握していないかもしれません。

今、都庁に映し出されているプロジェクションマッピングは、訪日観光客の夜間観光を意識して始めたものです。

小池都知事は東京都にインバウンドをもっと呼び込みたがっていて、訪日観光客に都庁以外にも夜間にいろいろな所を回ってほしいと考えています。そのため、今年からプロジェクションマッピングのように夜の名物になるようなことをやってくれる商店街などに助成金を出しているのです。

渋谷は訪日観光客を含め、たくさんの人でにぎわっているが路上飲みが問題にもなっている。そのため夜間の路上飲酒を通年禁止する条例が制定された 渋谷は訪日観光客を含め、たくさんの人でにぎわっているが路上飲みが問題にもなっている。そのため夜間の路上飲酒を通年禁止する条例が制定された

一方で、夜間に外国人が街をウロウロすることに都民はまだ慣れていないのかもしれません。2019年にラグビーW杯が日本で開催されました。東京都調布市の『味の素スタジアム』でも試合がありましたが、外国人の観客が街中でビールなどを飲みまくって騒いでいました。

コンビニで料金を払う前に棚から取って飲んでいたり、夜間の住宅街に入り込んだり、地域住民はかなり困っていました。夜間にいろいろな所に訪日観光客が訪れると、戸惑う都民はさらに多くなるかもしれません。

また、『水道管などインフラの老朽化が心配』ということですが、これは能登半島地震で水道管の破損が大きなニュースになったので、その影響があるのかもしれません。災害時のライフラインを気にしている都民が多いのではないでしょうか。

また、『マンションなどの老朽化が気になる』『地震対策が遅れている』などを問題視している人が多いことからわかるように、防災は都民の大きな関心事だと思います」

65歳以上のひとり暮らしが多い都道府県の1位は東京で、高齢者の約26%がひとり暮らしをしている(令和2年の国勢調査) 65歳以上のひとり暮らしが多い都道府県の1位は東京で、高齢者の約26%がひとり暮らしをしている(令和2年の国勢調査)

最後に、実際にアンケートから得られた都民の声を紹介しよう。

「アスファルトばかりで、夏は暑すぎる」

「タワーマンションが建ちすぎていると思う」

「人が多すぎ」

「孤独な老人が多い」

「最近、まともな人が選挙に立候補しない」

「選挙が迷惑系の人たちのおもちゃにされてつらい」

候補者たちは、こうした声にきちんと耳を傾けることができるのだろうか。