10月15日公示、27日投開票! ついに解散・総選挙が始まる! 石破自民党は議席を減らさずに済むのか? 裏金問題で処分された議員は当選するのか? 注目の選挙区を徹底解説する!
■裏金議員を有権者は許すのか許さないのか?
10月1日に首相に選出された石破茂氏は、10月15日公示、27日投開票の日程で総選挙を行なうことを決めた。すでに与党も野党も選挙モードに突入している。
では、注目すべき選挙区はどこなのか? 『黙殺 報じられない"無頼系独立候補"たちの戦い』(集英社文庫)などの著書がある、選挙に詳しいフリーランスライターの畠山理仁氏が解説する。
「今回の選挙のポイントは『自民党の裏金議員たちがどうなるか?』。特に離党した人、党員資格停止や役職停止処分になった人たちの選挙に注目してほしいです。
まずは『東京24区』の萩生田光一(はぎうだ・こういち)元政調会長。萩生田氏は裏金問題で5年間にわたり2728万円が政治資金収支報告書に不記載だったことがわかり、今年4月から1年間、党の役職停止処分になりました。そして、この問題で政調会長を辞任しています。
また、萩生田氏は旧統一教会と深い関係があったといわれていて、9月17日付の朝日新聞の朝刊には自民党総裁応接室で安倍晋三元首相と旧統一教会幹部と一緒に写っている写真が掲載されました。
そんな萩生田氏が立候補予定の東京24区に、長年統一教会問題を取材してきたジャーナリストの有田芳生(ありた・よしふ)氏が立憲民主党から出馬する意向を固めています。
萩生田氏は八王子市議、東京都議と地方議員から国政に上がってきた、とても選挙に強い人物です。そのため、これまではなかなか対抗できる人がいなかった。
ただ、今回は旧統一教会問題絡みで有田氏が出てくるので有権者がどう判断するのか。裏金問題、旧統一教会問題の萩生田氏を許すのか、許さないのかが問われています。
『東京11区』には、党員資格停止中の下村博文(しもむら・はくぶん)元文部科学大臣・元政調会長が出馬予定です。
党員資格停止ということは、自民党の公認が得られません。比例区での復活当選もありません。無所属で小選挙区のみで戦うということになります。
ライバルとなる立憲民主党の阿久津幸彦(あくつ・ゆきひこ)前衆議院議員は、都議選のときなどに自分の選挙区の候補者を一生懸命に応援していました。ですから阿久津さんの選挙になったら、そうした地方議員の人たちが逆に一生懸命に支えるはずなので、かなりいい戦いになると思います。
また『兵庫9区』の西村康稔(にしむら・やすとし)元経済産業大臣も1年間の党員資格停止中です。首相候補ともいわれたエリートですが、やはり無所属で比例復活もありません。
今はお祭りで挨拶をするなど、地元回りに力を注いでいます。党の中枢にいる人や大臣経験者はなかなか地元に帰ることができないので、今回はいい機会になったのかもしれません。
今まで余裕で選挙をしていた人が急に腰が低くなるなど、必死になって選挙活動をする姿が見られるんじゃないでしょうか。
そして、裏金問題で処分された大物政治家が無所属になったときに『それでも、これまでの経験を生かして頑張ってもらいたい』と思うのか。それとも『許せない』と思うのか。有権者がどう判断するのかにも注目です」
さらに"裏金問題の自民党離党候補vs自民党世襲候補"の戦いも見逃せないという。
「再編された『和歌山2区』には、自民党幹事長や経済産業大臣を経験した二階俊博氏の三男、二階伸康(のぶやす)氏がその地盤を受け継いで出馬予定です。
そして、ここに自民党から離党勧告を受けて離党した世耕弘成(せこう・ひろしげ)前参議院幹事長が立候補する意向と報道されました。
世耕氏は和歌山県内で参議院から衆議院にくら替えして、首相を目指したいという野望があります。でも、二階俊博氏が相手だと勝つのはなかなか難しい。しかし、息子だったら可能性はある。そうなると世耕氏が衆議院にくら替えするチャンスは今回しかないんです。
今は離党していても、ほとぼりが冷めたら復党がありえるのが自民党です。地元の人が『いつか自民党に帰ってくる』と思って、世耕氏に託す可能性はあります。
しかも、三男の二階伸康氏の地元での評判はあまり芳しくない。世耕氏が当選するかもしれません」
また、2021年7月に公職選挙法違反(有権者に現金を配るなど)で有罪判決を受け、公民権停止3年になった菅原一秀(すがわら・いっしゅう)元経済産業大臣も公民権停止が明けて、「東京9区」への立候補に意欲を見せている。
「菅原氏は公民権が停止されている間も地元で精力的に活動していたんです。ポスターの数もめちゃくちゃ多いし、新しいポスターに替える頻度も高い。
普通、公民権が停止されている間はおとなしくしていて、公民権が回復してから活動するはずなのに、こんなに政治活動している人を知りません。罪を認めたのも裁判になると時間がかかって公民権が復活するのが遅くなるからという理由らしいです。
ただ、自民党には一応、今村洋史(いまむら・ひろふみ)氏という9区の支部長で公認候補がいるので、どうなるのかという感じです」
■ハレンチ系議員は当選できるのか?
裏金ではないが、2023年11月に自民党の青年局が開いた親睦会で、水着のような露出の多い衣装の女性ダンサーを複数人招いて口移しでチップを渡していたことなどが問題視され、青年局長を辞任した「岩手3区」の藤原崇(ふじわら・たかし)氏と、立憲民主党の小沢一郎氏の戦いも注目すべきだという。
「小沢氏は前回2021年の衆院選小選挙区で藤原氏に敗れ、比例代表で復活しています。小沢氏は衆議院で現役最多当選回数(18回)の超ベテラン議員ですが、最近はその力が低下しているようにも思えます。
また、82歳と高齢の小沢氏ですが『政権交代するまで死ねない』と言っているので、あとどれくらい頑張らなければいけないのか心配になります。
一方、大失態を犯した藤原氏も新しいポスターをたくさん張っていて、支援者におわびというか丁寧な活動をしているということを地元の人から聞いています。
大物議員と不祥事議員の戦いは、どうなるのでしょうか」
ハレンチ系で動きが気になるのは、パパ活不倫で議員辞職した元自民党の宮沢博行(みやざわ・ひろゆき)氏の動きだ。
「宮沢氏は9月30日に『静岡3区から無所属で立候補する』と表明しました。最近はテレビ番組などに出て政治評論家的な発言をすることが多くなっていたので、少しは顔が売れているのかもしれません。本人は『この選挙がみそぎだと思います』と発言していますが、有権者はどう判断するのでしょうか」
立憲民主党の代表選に出馬した吉田はるみ氏の「東京8区」も面白そうだ。
「『東京8区』は吉田はるみ氏、自民党の門寛子(かど・ひろこ)氏、日本維新の会の南北(なんぼく)ちとせ氏による"女性の戦い"です。
門氏は石原伸晃氏の後継者で、地元選出の都議や区議ら石原氏の人脈を引き継いでいます。また、東大卒の元官僚で頭もいいし、内閣総理大臣補佐官付などの政府の仕事もしていたバリバリのキャリアのある人です。地元での活動も頑張っています。
そのため、吉田氏は代表選で17日間も地元を離れることを不安がっていました。結果的に代表選に出て地元での知名度を上げましたが、維新の会の南北氏が出ることで野党の票が割れる可能性があります。
そうなると、吉田氏と門氏の激戦になると思います」
最後に一時期は総裁最有力ともいわれていた小泉進次郎氏の「神奈川11区」も忘れてはいけない。
「ここは小泉進次郎氏が盤石で、本人は選対委員長として全国を回るため、選挙期間中に地元にはほとんど入らないと思います。いわゆる本人以外の人が選挙活動をする"留守番選挙"になるはずです。
2017年につばさの党(当時無所属)の黒川敦彦(くろかわ・あつひこ)氏が、安倍晋三元首相の地元・山口4区から立候補したんですが、そのときも安倍氏は一度も地元には戻らず、留守番選挙になりました。そして、黒川氏は山口4区をグルグル回って、好き放題にやっていたんです。
ですから今回、参政党が国政政党として活動していることをアピールするために、神奈川11区から候補者を出すということは考えられます」
そして、都知事選で2位となった石丸伸二(いしまる・しんじ)氏はどこから出るのか。
10月15日の公示は約1週間後に迫っている。