与党の自民・公明は衆議院で過半数割れしており、国会では個別政策ごとに他党の合意を得ながら採決を進めていかざるをえない。そのキャスティングボートを握る筆頭格が、衆院選で躍進した国民民主党だ 与党の自民・公明は衆議院で過半数割れしており、国会では個別政策ごとに他党の合意を得ながら採決を進めていかざるをえない。そのキャスティングボートを握る筆頭格が、衆院選で躍進した国民民主党だ
あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「国民民主党」について。

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「手取りを増やす」。なんとわかりやすいフレーズだろう。先の衆院議員選挙で国民民主党が躍進した。自民党には鉄槌(てっつい)を。しかし立憲民主党は批判ばかりだし、他党はオカルトに感じる......という一般層に政策面でアピールできた。

なかでも話題になったのが、基礎控除等を103万円から178万円に拡大する案だ。

そもそもインフレで税収は上がっている。生活者に還元して消費を促したり、税法上の「壁」でバイト等を遠慮している層を掘り起こしたりして、労働者不足を解決する意味もある。

当件については有識者のさまざまなコメントや試算がある。ただ、私はこの政策以外でも、国民から税金を取るだけではなく、収入を増やそうとする姿勢は評価されるべきだと思う。

そこで、いくつか国民民主党の政策を紹介したい。

同党は来夏の参院議員選挙まで、議席数の面から強い影響力をもつと思われ、しかも政策によって是々非々で与野党に賛成するといっている。

つまりは政策実現の鍵を握る可能性が高い。彼らの考えを知ることは有益なはずだ。

まず私が個人的に注目しているのは①暗号資産の取り扱いだ。

実は現在、少なからぬ額の暗号資産を放置している。現行の法制度では、暗号資産の売却益は総合課税(他所得との合算で税率が決まる)の対象で、最大55%が課される。

しかし、私は日本でもいつか分離課税となり、税率20%=株式や信託なみの税率になるほうに賭け、塩漬けにして売却益を得るのをやめている状況だ。

すると国民民主党の玉木雄一郎代表は、暗号資産の課税率を20%にすることを求めるとしただけでなく、大胆にも暗号資産の上場投資信託さえも導入するべきとした。いやっほー。ホルダーは狂喜乱舞したよね。

他にも②インボイス廃止と消費税減税のセットにはうなずいた。

インボイス制度については、税納付に関わる事務手続きの煩雑さに小規模事業者から苦情があがった。そもそも軽減税率がなければ一律で収めるだけだからね。マジでこれ実現してよ。

ちょっと怖いのは③下請法の適用拡大だ。

下請法は下請中小企業の利益保護のために、買いたたきや役務の提供要請の禁止などを親事業者に課しているが、その資本金条件を緩和する(適用範囲を拡大する)という。

しかしそうなると、発注先を日本以外の企業に切り替える例が増えるはず。慎重に検討をお願いしたい。

私は仕事柄、エネルギー政策にきわめて高い関心がある。AIが日常となる時代にはGPU(演算の大量並列処理が得意なプロセッサ)のフル稼働で電力消費量が爆上がりする。電気代の高さと、電力の供給不足は産業競争力低下につながる。

だから④原子力発電所の早期稼働はもっとも進めてもらいたい政策だ。

また、原子力関連の新技術への投資にも触れている。米国では地域によってブラックアウトが頻発している。日本では停電の短さが生活インフラの基礎であり、今後も前提となるはずだ。

なお公平のために付け加えれば、同党だけではなく他党についても、公開している政策を読んでみると面白い。本来は投票前にざっくりとでも見ておきたいものだ。

なによりも国民民主党の存在が政策の議論を活性化することを望む。官僚も同党へ政策を持ち込むべし。いよいよ既得権益を潰そう!

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坂口孝則

坂口孝則Takanori SAKAGUCHI

調達・購買コンサルタント。電機メーカー、自動車メーカー勤務を経て、製造業を中心としたコンサルティングを行なう。あらゆる分野で顕在化する「買い負け」という新たな経済問題を現場目線で描いた最新刊『買い負ける日本』(幻冬舎新書)が発売中!

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