昨年7月、米カリフォルニア州グレンデール市の公立公園内に、市議会決議によって設置された従軍慰安婦像。これは韓国系市民らの団体の働きかけによって実現したもので、韓国政府による反日プロパガンダ活動につながっていると目されている。

これに対して昨年12月中旬、米ホワイトハウス公式サイト内の請願受付コーナーに、グレンデールの慰安婦像撤去を求める署名運動が立ち上がった。同コーナーではひとつの請願案件に対し、1ヵ月以内に国内外問わず10万人以上の有効署名が集まると、米政府がなんらかの対応、もしくは回答をする決まりになっている。

で、どうなったのか?

署名は日本人を中心に続々と集まり、1月2日には目標の10万人を突破、NHKや日本経済新聞などのメディアで報じられることとなったのである。

このホワイトハウス請願を自ら立ち上げ、署名運動の旗振り役となったのが、米テキサス州在住のイタリア系アメリカ人、トニー・マラーノ氏だ。

マラーノ氏は現在64歳。米大手通信会社AT&Tを定年退職後、自身の保守的思想に照らし合わせて「これはおかしい」と思われるアメリカの政治状況に接すると、その都度YouTubeを通じて自撮り動画で異議を唱えていた。そして2008年、アメリカに本部を置く反捕鯨団体シーシェパードが行なっている日本船妨害活動を激しく非難したところ、その映像が翻訳字幕付きでニコニコ動画に転載され、日本における彼の認知度が一気に高まったのである。

今や彼は、日本のネット社会では“テキサス親父”の愛称で親しまれ、日本関連の意見を述べた際には、多いもので50万回以上の動画再生を記録するほどの人気を誇っている。

彼の毎回の動画に翻訳字幕をつけ、ホワイトハウス署名では日本人に向けた告知を行なうなど、マラーノ氏の活動の日本側窓口となっている『テキサス親父日本事務局』の藤木俊一氏が語る。

「誤解されやすいのですが、トニーさんは決して日本贔屓(びいき)というわけではありません。むしろ、アメリカの昔気質(かたぎ)の愛国者といったほうが正しい。今のアメリカはおかしなことがまかり通りすぎている、アメリカにもっとよい国になってほしいというのが彼の動画発信の原点なんです。シーシェパードの件にしても、自分勝手な理屈で日本をスケープゴートにするやつらのやり口が、トニーさんには卑劣に思えた。そこで分別あるアメリカ人としての正義感から、日本擁護の論陣を張ったというわけです」

これがきっかけとなって日本からの反応が多く寄せられるようになると、日本への理解や共感が深まり、自然と日本関連のトピックが増えていったというわけだ。

「トニーさんは日頃から、『日本人の謙虚さや穏やかさは尊敬に値するが、あまりに辛抱強すぎる。理不尽なことに対してはきちんと声を上げ、行動を起こすべきだ』と言っています。今回の像撤去の署名活動にしても、根拠なく狂信的に騒ぎ立てているのではなく、アメリカの公文書館から戦時中の米軍資料を取り寄せ、史実に基づいて韓国政府の主張に反論しているのです」(藤木氏)

署名者の10万人突破に当たり、マラーノ氏は次のようなコメントを出した。

「そもそも、日韓の間で論議されている問題を象徴する像を、なぜアメリカの、それも公立公園に持ち込む必要があるのか? 結局はアメリカ国内での対日イメージを損なわせることだけが目的の、ジャパンバッシングの道具にすぎないではないか」

そしてまた、今後の米政府の対応について、彼はこんな見通しを持っている。

「正直なところ、米政府といえども市議会での決議を覆すのは困難で、即座に像が撤去される可能性は低いかもしれない。しかしながら、請願が受理されるだけの署名が集まったという事実は、あの受け入れ難い慰安婦像の存在を全米の国民に知らしめ、今後同様の像や碑がアメリカに設置されるのを妨げる力にはなるはずだ」

韓国が仕掛ける反日プロパガンダに対し、これまで後手後手に回ってきた日本。今回、アメリカ人のテキサス親父が実現させた撤去請願は、オバマ政権をどう動かすのだろうか。

*『テキサス親父オフィシャルサイト』(日本語)【http://texas-daddy.com】