「原発ゼロ」もひとつの争点になっている今回の都知事選。だが、都政とは関係ないのでは?と思っている都民も多いはず

東京都知事選の出馬会見で「脱成長」路線を表明した細川護煕氏。かねてから主張していた「原発ゼロ」を改めて主張し、都民に問う構えだ。

だが、根本的な問題として、東京都に原発はない。たとえ細川氏が都知事になったところで、影響力を行使できるのだろうか?

この疑問について、原発政策に精通する現役キャリア官僚にして18万部突破のベストセラー『原発ホワイトアウト』(講談社)の著者でもある若杉冽氏が解説してくれた。

「東京都は日本で一番電力を消費しているのですから、東京が脱原発を進めれば、国の原発行政に絶大な影響を与えられるのです」

その方法とは? 若杉氏が脱原発への道筋を語る。

「まず、細川さんが当選したあかつきには、ぜひとも原子力発電に課税していただきたい。電力は、原子力、火力、太陽光など、由来ごとの比率がはっきりとわかります。ですから原子力に由来する分にだけ課税するのです。そしてその財源を、太陽光発電パネルなど、新エネルギー整備の補助金に充てる。太陽光のほかにも、都市ガスを使った家庭用の燃料電池などは一戸当たり250万円くらいです。それらに対して補助金を出せば一気に普及するでしょう」

つまり、課税による財源確保で原子力発電から新エネルギーへの転換を図るということ。

「電力会社はすべての家の屋根に太陽光発電パネルがつき、燃料電池が普及し、各家庭が発電所になってしまうことを何よりも恐れています。民には発電させず、すべて独占で発電して供給するのが彼らのビジネスモデルですから。さらに、都道府県が公営で発電所を持つのも有効です。猪瀬さんも東京ガスと組んで都が火力発電所を持つ構想を考えていました」(若杉氏)

さらに、都知事の権限を最大限に行使すれば、もっと過激で効果的な方法もあるのだという。若杉氏が続ける。

「東京都の傘下には、23の特別区と市町村があります。その市区町村長に、原子力由来の電力を受け入れるか否かの意思表示を求める条例を作るのです。もし受け入れるということならば、その使用料に応じて、その市区町村がどれだけ使用済み核燃料を生み出したか簡単に算出できるので、その分の核のゴミを自分たちで引き取らせる義務を課す条例も作る」

国という大きな枠組みではなく、市区町村レベルでの原発問題に発展させることが脱原発の鍵になるという。

「すでに東京の一般ゴミは地区内での処理が原則となっています。核のゴミにも同じ考え方を適用するということ。住民たちはそれだけの覚悟を持って原発を続けたいと言っているのかどうかということです。このような条例ができれば、東京は即脱原発を達成できると思いますね」(若杉氏)

日本最大の電力消費地である東京都が脱原発を決断すれば、間違いなくほかの道府県にも波及すると若杉氏は見ている。

はたして、そこまでの覚悟がある都民がどれだけいるか? 投開票は2月9日だ。

(取材/菅沼 慶)

■週刊プレイボーイ6号「これが『原発ゼロ』最後の大チャンス!一方、細川・小泉に期待するアメリカ政府の思惑とは?」より