以前付き合っていた女性の実名や個人情報とともに、その女性の裸や下着姿、SEXシーンを撮影した画像や動画をネット上にバラまく加害行為が今、非難を浴びつつ注目を集めている。
投稿するのはもちろん、その女性とかつて交際のあった男性だ。変態行為の一種で、振られた腹いせで投稿することから「復讐(リベンジ)ポルノ」と呼ばれている。日本の場合、こうした行為は刑法上、わいせつ物頒布(はんぷ)罪(最高刑・懲役2年)や脅迫罪(同2年)、強要罪(同3年)、または名誉毀損罪(同3年)などで処罰される立派な犯罪だ。
相手が未成年者であれば児童ポルノ禁止法違反(同5年)にもなる。さらには民法上も、プライバシー権を侵害したとして損害賠償請求の対象となりうる。今のところ罪を問われているのは「復讐」した者のみだが、今後はネット上での拡散に安易に協力した者まで幇助(ほうじょ)罪(刑法62条)に問われる可能性がある。
この変態行為、昨年10月に起きた東京・三鷹の女子高生「復讐ポルノ&刺殺」事件を機に、広く知られるようになった。一説には「増加傾向にある」とも言われるが、それを端的に裏付ける統計データはない。あられもない自身の姿を撮らせてしまったり、迂闊に画像や動画のデータを相手に渡してしまったことへの後ろめたさから、「警察に相談できずにいる被害女子学生も少なからずいる」(教育関係者)ためだ。
首都圏のある中学校では、在校生約900人のうち、わいせつ画像を渡したことで交際相手から脅されている生徒が複数名いるという。中には不登校に追い込まれている生徒もいる。顕在化しているのはあくまでも氷山の一角に過ぎないと捉えたほうがよさそうだ。
警察でも「復讐ポルノ」単独での摘発件数は集計しておらず、唯一あるのは、警察への「通報件数」データ(表参照)。復讐ポルノを含む「ネット上でのわいせつ物公然陳列」の通報件数は年々増え続けており、最新のデータである平成24年は2万7334件と、3万件に迫る勢いだ。安易にポルノをネット上に撒き散らす人々が増え続けているのは間違いない。
自民党女性局で復讐ポルノ問題に取り組む三原じゅん子局長(参議院議員)に話を聞いた。
「リベンジポルノは現行法でも犯罪なのだということを社会全体で認識するところから、対策は始まるのだと思います。
被害者の女性は、相手に嫌われたくないから、嫌だけれど仕方なしに撮らせてしまったり、あるいは隠し撮りをされたり、ひどい場合には強引に撮られるケースもある。だから、女性側が『撮らせない』のと同時に男性側も『撮らない』よう、子どもの頃からの教育が大事なのかもしれません。
違法な画像や動画を被害者がスピーディに消去できる権利の確立も重要でしょう。まず改正しなければならない法律は『プロバイダ責任法』です。現在は、選挙の候補者に対するものなら2日間を過ぎれば消去できるのに、それ以外の場合は7日間もかかる。もっと短縮する必要があります。
新法の制定や現行法の改正も検討中です。現行法で十分であれば被害は増えないはずだし、泣き寝入りする女性もいないはずなんです。自殺する人もいる。法律や罰則の強化がその抑止力につながると思っています」
問題は、こうした法改正や罰則の強化にどれほどの抑止効果があるのか―だろう。三鷹の女子高生「復讐ポルノ&刺殺」事件では、「復讐」を遂げた後、犯人は自殺を仄(ほの)めかしていたと報じられた。まるで無理心中である。自爆テロのごとく、自分が死のうが逮捕されようが構わない相手に対しても「抑止力」は発揮できるのか。
ところで、三原氏はこうも語っていた。
「脅して復縁なんて、ちょっと考えられない。私たちが若かった時代には男友達の中に『そんなみっともないことするな!』と止めてくれる仲間が必ずいました。こんなことをしたら、本当に友達をなくします」
蔓延(はびこ)る変態行為への抑止力となりうるのは、むしろそんな「仲間」たちのような気がする。
(取材・文/明石昇二郎&ルポルタージュ研究所)