春先の暖かい気候になったと思ったら、今度は大雪。気候が不安定な今年の冬だが、これからまた厳しい寒さがやってきそうだ。

最近の研究によると、太平洋赤道付近の「海水温変動」が、日本の冬の寒さに大きく関わっている可能性の高いことがわかってきた。

海水温の変動とは何か? 東京大学名誉教授の山形俊男氏が解説する。

「太平洋の赤道付近の海水温の解析から、数十年周期の“変動”が起きていることがわかってきました。熱帯太平洋の中央部あたりで海水温が高くなる『エルニーニョ傾向』と、逆に中央部で海水温が低くなる『ラニーニャ傾向』が数十年周期で交互に現れているのです。われわれはこの周期的な変動を『太平洋振動』と呼んでいます」

山形氏らの研究によれば、1945年から1976年まではラニーニャ傾向、1977年から1997年まではエルニーニョ傾向、そして1998年以降は現在まで再びラニーニャ傾向にあるという。

そしてこの太平洋振動がラニーニャ傾向にあるときは、冬の偏西風の蛇行が発生し、日本は寒波や豪雪に襲われやすくなるという。過去の豪雪被害として、1963(昭和38)年の「サンパチ豪雪」や、2006(平成18)年の「平成18年豪雪」が有名だが、いずれも太平洋振動がラニーニャ傾向にある時期とピタリと符合する。

その大まかなメカニズムは次のようなものだ。

偏西風は通常、西から東に吹き、北極の寒気を「封じ込める」役割を果たしている。ところが、太平洋振動がラニーニャ傾向のときは、インドネシア付近の海水温が高くなり上昇気流が活発化して、太平洋北部に大きな大気の「渦」の列を作り出す。この渦に引きずり込まれるようにして偏西風が蛇行し、北極の寒気が日本付近に下りてくるのだ。

実際、今年1月上旬の偏西風の状態を見ると、北米や日本付近の極東では偏西風が南に蛇行して北極の強い寒気が一気に流れ込み、異常な寒さをもたらしている。

1月上旬、アメリカを「過去20年で最強」の大寒波が襲ったことは記憶に新しい。また日本でも、1月10日、927地点ある全国の観測点の8割近く、721地点で最低気温が氷点下となる「冬日」となった。

だが、さらなる寒気が日本に到来すると気象研究家の幣洋明(へい・ひろあき)氏は警告する。

「すでに中国東北部付近にはマイナス約46度の寒気があります。今後、“今冬最強の寒気”が日本列島から沖縄付近まで南下してくると予想されています」

寒さの本番はこれからだ。

(取材/西島博之)