ドリンクやフードを“原価”で楽しめる「原価バー」なるお店が、ここ最近増えている。外食産業に詳しいフードアナリストの重盛高雄氏が解説してくれた。
「高いものが売れないというデフレ全盛期の2011年頃から、市場全体がモノをいかに安く売るかという流れになっていた。その流れのなかで、扱う商品が安かろう悪かろうにならないようにと生まれたビジネスモデルが、入場料をもらって一品一品の単価を究極まで安くした原価バーなのです」
一品一品は原価とはいえ、入場料がかかる。はたしてコストパフォーマンスはいいのだろうか?
「激安を売りにしていない普通の居酒屋なら生ビールやおつまみを6品も注文すると、平均的な客単価である3000円に達してしまいます。ですが、例えば、東京都内に3店舗を構える『原価BAR』の五反田店さんだと、アサヒスーパードライ(360ml)が180円だったり、普通のおつまみも100~200円程度からあるので、それらを8、9品頼んでようやく入場料含めて合計3000円程度。どちらがおトク感が高いかは言うまでもありませんよね。もちろん、それ以降も注文する品数が増えれば増えるほど、おトク感も増すわけです」(重盛氏)
実際に「原価BAR 五反田店」を訪れてみた。1500円の入場料を支払って入店すると、店内はカウンター席とテーブル席のある、黒基調のオトナな雰囲気。
メニューを見ると、有名な銘柄ウイスキーの「ザ・マッカラン12年」が190円、「自家製ピクルス」が90円、「ツブ貝のガーリックバター」が210円、さらに国産ウイスキーの高級ブランド「余市20年シングルモルト」が750円、「フォアグラのソテー」が480円と、普通の居酒屋やレストランでは考えられない値段になっている。
同店を運営する「ハイテンション」の柳谷智宣専務に話を聞いた。
「フォアグラはフランス産で、他店なら1500円程度の値段設定だと思います。ほかのメューもだいたい通常のお店の3分の1から4分の1程度ですね」
いくら入場料があるとはいえ、そんな出血価格で大丈夫なのか?
「おかげさまで曜日問わずに満席の状態が続いているので、利益は出せています。ただ、正直に言えばギリギリ(苦笑)。それでもお客さまからは『ほかのバーでは試せない高い銘柄のお酒も、ここならいろいろ飲み比べができてうれしい』といった声もよくいただいていますし、ウチをきっかけにいろんなお酒に親しんでもらえれば本望です!」(柳谷専務)
カウンターで料理を受け取り、その場で料金を支払うキャッシュオンデリバリー方式にしてあるのも、原価提供のための秘訣。
最初は戸惑うが、一度行けばそのおトク感に満足できる原価バー。リピーターが増えるのも納得だ。
(取材・撮影/昌谷大介、武松佑季[A4studio])
■週刊プレイボーイ7号「巷に増加する『原価バー』コスパ最強オーダー法!!」より