引っ越しシーズン真っ只中の2月、物件選びの前に大事なことを忘れていないだろうか? それは、「不動産屋選び」だ。
「借り主にとって都合の悪い情報を隠そうとする業者は少なくありません」
こう忠告するのは、ブログ『賃貸管理クレーム日記』の管理人、熊切伸英氏だ。たとえば、「駅から徒歩○○分」の文字。
「徒歩所要時間は、不動産の広告表示に関する公正競争規約で算定基準が定められ、『1分=80m』で算出された“机上の数字”が記載されています。踏切や信号、坂道が多ければ時間オーバーして当然なんですが、それは聞かれなければ教えてくれない情報です」(熊切氏)
つまり、机上の数字ではなく“実際の所要時間”を教えてくれるのが、いい不動産屋ということ。だが、なかには悪質な業者も存在する。都内の仲介会社社長のA氏が明かす。
「契約前の内見時に、車での送迎を執拗(しつよう)に提案してくる業者は要注意。そこには実際の徒歩所要時間を隠す狙いがある場合も……」
ほかにも、周囲に建設現場や工事現場があり、交通量が多かったり騒音がうるさかったりする物件の場合、内見を現場が休みの日曜日に設定しようとするケースもある。
また、定番トーク「人気物件ですので、今決めないと埋まってしまいますよ」だが、その場で手付金の話を持ちかけられたら警戒すべし。
「『仮押さえしておきますから、手付金を支払ってもらえますか?』と言ってくる業者は悪徳業者の可能性が高い。手付金については過去、契約キャンセル時に返還されないトラブルが続出し、業界内では客からの受け取りが禁止されていますから」(前出・A氏)
百歩譲って、それが本人の希望どおりの物件ならまだいい。しかし、業者都合で希望とはかけ離れた物件を押しつけられることも少なくないのだという。
「仲介会社は一般非公開の業者専用の情報サイトを見ながら客に物件を提案するのですが、そこには『AD有り』『担ボ有り』と記載された物件も数多い。『AD』とは家主から仲介会社に入る広告料(賃料1ヵ月分)、『担ボ』とは家主から仲介会社の営業マンに入る担当者ボーナス(現金や商品券)。彼らは臨時収入を得るため、客の希望度外視でそうした物件を薦めてくることがあります」(A氏)
こうした物件を避ける方法はないのか?
「物件広告を注意深く見てください。記載された不動産会社名(問い合わせ先)を帯で隠したり、書き換えられているケースがあります。そうした業者は、家主と直接の取引関係がない客づけ専門の孫請け会社。借主からの仲介手数料(賃料1ヵ月分)のみを収益源とする業者で、厳しいノルマを社員に課し、基本給が極端に低い歩合制を採用する傾向があります」(A氏)
確かに、いい部屋ほど即決しなければすぐになくなってしまうのも部屋探しの鉄則。最終的には自分の目と足で確かめる、素早い行動力が必要だ。
(取材/興山英雄)
■週刊プレイボーイ8号「絶対に頼んではいけない不動産屋&引っ越し業者の見抜き方」より