100グラム1000円以上の高級品、国産のブランド和牛。「国産牛」よりもずっと高いけど、その違いって?

ちょっと贅沢しようと思ってスーパーでおいしい牛肉を買おうとしたとき、ふと気になるのが「和牛」「国産牛」といった表示。どちらも同じ牛肉のように思えるが、実は大きな違いがあることを知っていただろうか。

まず、日本国内で流通している牛肉は大きく「国産」と「外国産」の“産地”で分けられる。一方「和牛」は、国産の中の一カテゴリー、つまり品種だ。

一般に国産牛とは、国内で育てられた(1)和牛以外の肉用種、(2)乳牛(ホルスタイン)と和牛をかけ合わせた交雑種、(3)乳の出なくなった廃乳牛、(4)乳用種の雄などを指す。また、外国種や輸入牛でも日本国内での肥育期間が海外の飼育期間より長ければ国産牛となる決まりだ。

このように、日本国内で生産された(または日本で長く飼育された)牛の総称を「国産牛」というのである。

一方、「和牛」は(1)黒毛和種、(2)褐毛和種、(3)日本短角種、(4)無角和種の4種類から成り立っている品種で、付け加えるならこれら4品種間の交雑種も和牛とされる。各種和牛は明治時代以前から日本で育てられていた在来種牛をもとに、外国種などと交配し改良を重ねたものだ。

なかでも黒毛和種は、4種の中でもっとも小さな体だが、脂肪交雑(霜降り)に優れ、神戸ビーフ、松阪牛など優良銘柄はすべて黒毛。もっとも、国内で飼育されている和牛の95%以上は黒毛和種である。

褐毛和種は熊本と高知で改良されてきた品種で、肉質は脂肪分が抑えられたヘルシーな赤身肉系。日本短角種と無角和種も低脂肪な赤身系の肉質ではあるが、いずれも現在は飼育頭数が極端に少なく、口にする機会は少ない。

こうして厳格に生産管理されている「和牛」だが、将来的には消滅する可能性もあるという。

今、食肉業界の関係者は口をそろえて「牛の数が少ない」と嘆き危惧している。2010年に宮崎県で発生した口蹄疫騒動や、2011年の東日本大震災による福島第一原発事故の影響で、放射性セシウムに汚染された稲藁を食べるなどした牛を殺処分したことが主に大きく影響しているといわれている。

さらに同じく2011年、多くの繁殖牛を飼育していた安愚楽牧場の経営破綻も追い打ちをかけたとする関係者も少なくない。これらの大事件が重なり、当時、繁殖すべき子牛を増やせなかった実情が今になって影を落としているのだ

神戸ビーフ、松坂牛など、海外にも多くのファンを持つ和牛。日本が世界に誇る食材は、大事に守っていかなければならない。

(取材/コバタカヒト)

■週刊プレイボーイ9号「13ページ大特集 もうダマされない! 世界に誇れニッポンの和牛!!」より