4万人以上の警察官を抱える警視庁という巨大捜査機関には、ほかの道府県警とはケタ違いの力がある。特に、その政治性が露(あらわ)になるのが「選挙違反」だ。
弁護士で元検事の郷原信郎(ごうはら・のぶお)氏に聞いた。
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アメリカなどでは、選挙管理委員会のような中立機関が告発した事件に限って選挙違反を適用する。捜査機関が捜査を通じて政治に介入する事態を防ぐためだ。ところが、日本の公職選挙法では、どの事案を摘発するかという裁量権を捜査機関が持っている。
国政選挙や統一地方選では、各都道府県警に一定のノルマが課される。ノルマを達成するために特定の候補に狙いをつけ、見込みが外れた場合も、細かい事件であろうがなんとかして公選法違反に仕立て上げてしまう。これが警視庁となると、それなりの事件を挙げないとメンツが立たない、ということも当然起こり得る。
数年前の参院選で比例区から出馬したある候補者が、警視庁捜査二課にマークされた(候補者は落選)。選挙終了後、徹底的に捜査したが、ロクな事件が出てこない。それでも最後は、候補者が経営する会社の従業員が選挙活動で電話かけをしたことに対し、「給与を支払う約束をした」(実際には支払われていない)として逮捕に踏み切った。われわれの常識では考えられないことだ。
これまでは、検察がある意味で警視庁に歯止めをかけてきた。しかし、その検察も最近は不祥事などでボロボロになっている。警察幹部が「ちょっと無理な事件なんですが、なんとかお願いします」と言ってきたら、検察も認めざるを得なくなってきている。そう感じることが少なくない。
例えば、2月12日に初公判が開かれたPC遠隔操作事件。これまでの報道を見る限り、あの事件を立件するのは、検察としてかなり勇気がいったはずだ。昔の検察であれば、もっと慎重に捜査をするようにストップをかけたのではないか。
警察と行政の関係、そして警察と検察の関係。都民は関心を持って見守っていく必要がある。
(構成/頓所直人)
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