日本一高いビル、「あべのハルカス」(大阪市阿倍野区)が3月7日、にぎにぎしくオープンした。その高さは300m!
当然、ライバルは日本一の座を奪われた横浜ランドマークタワー(296m)、タワー日本一の東京スカイツリー(634m)あたりと思っていたら、予期せぬところから“熱烈ライバル宣言”が!
あべのハルカスから徒歩15分ほどの距離にある通天閣(大阪市浪速[なにわ]区)である。
とはいえ、通天閣は高さ103m。いくら老舗の人気タワーとはいえ、ライバルとして名乗りを上げるにはさすがに分が悪くないか?
だが、通天閣観光株式会社の高井隆光副社長は首を振る。
「確かに、通天閣の高さはあべのハルカスの3分の1ほど。企業規模も向こうは鉄道会社の近鉄さんという上場企業。こちらは気分だけは上々の同族会社。高さも経営規模もまったくかないません。それでもライバル視するにはワケがあるんです。
というのも、一部マスコミがあべのハルカスのことを“平成の通天閣”と呼び始めたんですわ。おいおい、ちょっと待てよと。そんなこと、元祖・通天閣は一度も認めてへんぞと(笑)。そうしたこともあって、ここはあべのハルカスに対抗して通天閣の存在感を示さなあかんと、ライバル宣言をさせてもらうことにしました」
すでに勝利の目算も立っているのだとか。
というのも、一昨年、通天閣はオープンしたばかりの東京スカイツリーに勝手に宣戦布告し、見事に開業100年で3番目となる、132万人もの来場者を集めた実績があるのだ。
打倒あべのハルカスの3つの秘策とは?
高井副社長が胸を張る。
「『高さで負けても、面白さとインパクトで負けるな』を合言葉に、展望台のリニューアルや3代目ビリケンさんのお披露目イベントなどをぶち上げ、史上3番目の入場者数を記録しました。あべのハルカスが巨人なら、うちは阪神のようなもん。巨人も阪神もセ・リーグにお客さんを呼ぶために共闘はしても、集まったファンを囲い込もうと激しく戦っている。同じように、あべのハルカスもうちも、このエリアに観光客を呼び込むまでは同志ですが、それ以後はライバルになるわけです」
ん? それって話題のスポットに勝手に勝負を挑んでは衆目を集め、客を呼ぼうという便乗商法のような気がしないでもないが……。まあ、いいか(笑)。
実は高井副社長、打倒あべのハルカスのために3つの秘策を用意したという。
ひとつ目は、あべのハルカスが開業した3月7日に限り、ライバルの300mという高さにちなんで、通天閣の入場料の大人700円、大学生500円を、小学生・幼児料金の300円に値引き。
「ただし、7日だけでした。ずっと続けると、会社が潰れてしまいますから」(高井副社長)
ふたつ目は「通天閣の展望台から、あべのハルカスを眺めようキャンペーン」だ。
「うちの展望台からは、スッキリと美しいあべのハルカスの全景が見えるんですわ。何しろ、オーナーの近鉄さんが、建設中のあべのハルカスの定点撮影ポイントとして、通天閣展望台を選んだほどですから。そう、あべのハルカスは上るものではありません。通天閣からそのシルエットを眺めるものなのです」(高井副社長)
そして、最後は通天閣発のアイドルグループ、平均年齢67・5歳の「オバチャーン」によるライブ決行。
「AKB48が“会いに行けるアイドル”“神セブン”なら、こっちは“絡んでくるアイドル”“仏(ほとけ)セブン〟です。CDを買うと、お悩み相談券がもれなくついていて、人生相談もしてもらえる。きれいでオシャレなあべのハルカスにはおばちゃんは似合わない。このコテコテ感はウチの独壇場ですわ、ハイ」(高井副社長)
一昨年の東京スカイツリーに続き、今年も注目度ナンバーワンのあべのハルカスにチャレンジ宣言し、集客アップをもくろむ通天閣。その心意気やよしだが、果たして、柳の下に2匹目のドジョウはいるのか?
(取材/ボールルーム)