ここ数年、かもめんたるや槙尾ユースケをはじめとした“女装芸人”が人気を獲得。さらには新宿・歌舞伎町で定期開催される女装ニューハーフイベント「プロパガンダ」に全国から数百人が集まるなど、「女装カルチャー」がにわかに注目を集めている。
なかでも、異様な熱気を放っているのが大阪の女装界隈だという。いったい大阪で何が起きているのか?
2月下旬に大阪府西区の結婚式場で開催された「女装ブライダルショー」に参加していたユキさんに聞いた。
「最近は女装イベントにもよく行きます。最近は『ウルトラ・エクセレント』っていうイベントが盛り上がってますね。DJやライブだけじゃなくて“女装大喜利”とか“あえぎ声コンテスト”なんてのもあって。ちょっとエッチなお題が出るんですよ! ちなみにその大喜利では、吉本芸人のデジタルケイタさんが優勝したこともあるんです。当然、女装で(笑)」
この「ウルトラ・エクセレント」は、飲食店やイベントスペースがひしめく千日前の「味園(みその)ビル」で、3ヵ月ごとに開催。オタク&サブカル系企画の延長で2008年に始まり、現在は20代の若い女装子(じょそこ)を中心に毎回100人以上を集客、大阪女装界の台風の目になっているのだ。
女装専門誌『オトコノコ時代』の井戸隆明編集長は、「『ウルトラ・エクセレント』が女装イベントとして定着することで大阪女装界に南北の分断が生まれた」と指摘する。どういうことか?
「もともと大阪には堂山(どうやま)と寝屋川(ねやがわ)という、元祖・ハッテン場のような地域がありました。それが70年代末からキタを中心に“ルーム系”という大阪独特の女装文化が広がり始めたんです。支持層は昭和生まれの女装子で、下は40代、上は80代までいます」(井戸氏)
“ルーム”とは何なのか?
“ルーム”とは? 大阪女装界を黎明期からウオッチし、“ルパンさん”の愛称で親しまれる桑山正英氏が解説してくれた。
「20畳くらいのマンションの一室をルームというて、女装さんが着替えたりメイクしたりする部屋、女装さんと男性、もしくは女装さん同士が出会ってエッチする部屋に分かれてるの。全盛期の2000年頃は6店くらいあって、多いときで一日に一室30人ぐらいが利用してた。客層でいったら女装さんが8割、女装さん好きの男性が2割ぐらいだったよね」
前出の井戸氏が続ける。
「一方でここ数年、ルーム系とは別の流れで、オタク文化になじんだ“男の娘(こ)”と呼ばれる若い女装子たちがミナミを拠点に『ウルトラ…』をはじめとしたイベントや新店舗を立ち上げ、新たな女装文化を築きつつあるんです」
キタ(梅田)の“ルーム系世代”と、ミナミ(なんば)“男の娘世代”。言い換えれば、昭和の女装マニアVS若いオタク女装子の世代間対立というわけだ。女装界は奥が深いとしかいいようがない。
(取材/九龍ジョー、撮影/佐伯慎亮)
■週刊プレイボーイ13号「“大阪女装界”の派閥乱立が今すごいことになっている!」より