1921年、毛沢東(もうたくとう)ら57人によって上海で結党された中国共産党は、今から7年後の2021年に創立100周年を迎える。現在の中国政府による多くの施策は、この記念すべき年に一定の成果を挙げるよう“逆算”され、着々と進行している。
もちろん、軍事戦略もそのひとつだ。06年に当時の胡錦濤(こきんとう)国家主席が「中国は海洋大国である」と宣言して以来、政府はすさまじい勢いで海軍を増強。21年までには、軍艦の年間製造数がアメリカを抜いて世界一になるという予測もあるほどだ。
1989年以来、中国の軍事予算はほぼ毎年、ふたケタ成長を続け、現在では当時の約30倍。3月に中国政府が発表した今年度の軍事予算も、前年比12.2%増の約13兆円と、高い伸び率をキープしている。
中国軍の動向に詳しいジャーナリストの古是三春氏は、その背景をこう解説する。
「中国の政治体制は、強大な人民解放軍という“武力支配レジーム”に支えられた一党独裁。そのため、軍は市場経済システムのなかで最大の利権享受者となっているわけです。
近年は中国経済の成長鈍化が指摘されていますが、今年に入って共産党は国内の農業地帯を激しく収奪し、大型公共事業によって経済成長を維持。こうして軍事予算の伸び率も高くキープされています。この傾向は、中央軍事委員会という“党・軍合同司令部”を頂点とする中国共産党政権が続く限り、拡大していくことになるでしょう」
世界一の軍事費大国・アメリカを、中国が抜く日も近い
中国の軍事予算の内訳は一切公表されていないが、古是氏によれば、発表金額の中には新兵器の開発費などが含まれていない可能性が高いという。もともと中国の兵器開発は軍部と民間事業の区分けが非常に曖昧(あいまい)なこともあり、他国の算出基準に照らし合わせれば、実際の軍事費は公表数字の2倍以上になるといわれる。
仮に今後も中国の軍事予算が年間12%ずつ成長していくとすると、2021年には現在の約2.1倍。今年度の実際の軍事費が公表数字の2倍――つまり約26兆円だとすれば、21年度にはその金額が55兆円程度にまで跳ね上がることになる。
一方、長年の間ぶっちぎりで世界ナンバーワンの軍事費を誇ってきたアメリカの今年度軍事予算は約52兆円。しかし、政府は財政赤字に苦しんでおり、今後10年間にわたって合計50兆円――単純計算すれば1年当たり5兆円――が「強制削減」されることが決定的だ。少なくとも、軍事予算がこれ以上増える可能性は限りなくゼロに近い。
つまり、21年には中国が「世界ナンバーワン軍事費大国」となっている可能性は非常に高い。軍事力に比例して、その影響力はどこまで広がっているか、隣国である日本には無視できない問題だ。
(取材協力/世良光弘、小峯隆生)