会見を取材した記者のひとりがこう振り返る。
「痩せこけた頬、うつろな表情で登壇し、極度の緊張のせいか、最初はひと言発するたびに『はあ、はあ』と、息遣いが聞こえてきて、とにかくしんどそうでした」
4月9日、大阪市内で理化学研究所の小保方(おぼかた)晴子・研究ユニットリーダー(30歳)が、STAP細胞の論文問題についての反論会見を行なった。その表情や様子は「ノーベル賞級の大発見」と称賛された1月末の会見時とは正反対のものだった。
それでなくても、この会見は始まる前から荒れ模様。受け付け開始時間の1時間前には、すでに会場前に報道陣の長蛇の列が。
「ぎゅうぎゅう詰めで、並びの列がわからなくなってしまったほど。そのため、一部から『割り込むなよ!』『本当にこんな状態で会見なんてできるのか!』なんて声も上がっていました」(記者)
理研は4月1日、小保方氏の研究に「改ざん」「捏造」があったと公表していた。そのため、会見では厳しい追及の質問が相次ぐことが予想されていたのだ。
なのに、会見の主役は最初からヘロヘロ。報道陣もピリピリ。これでは小保方氏に釈明を許すどころか、一方的な“つるし上げ”の場になっても不思議はなかった。
だが、結果は……。
「スムーズな会見運びで、報道各社も過不足なく、小保方氏に質問し、回答を得ることができた。会見終了後にクレームが出るようなことはなかった」(記者)
何が功を奏したのか?
「小保方氏の代理人を務め、会見にも同席した弁護士の仕切りが見事でした。そのせいか、当初はひきつっていた表情だった小保方氏も、終盤には答えに詰まった質問に苦笑を浮かべるなど、緊張を和らげていました」(記者)
その結果、質問にも小保方氏自身の言葉で答えることが可能となり、報道陣も“満足”したのだという。
仕切り上手な弁護士、いったいどんな人?
確かに、会見に参加した週プレ記者の目にも、弁護団の仕切りは見事だった。例えば、こんなシーン。殺到した報道陣と受付スタッフが、会見場に入れる人数をめぐって険悪な雰囲気になりかけた瞬間、その弁護士がすっと現れ、こう裁定を下したのだ。
「新聞社は一社カメラ3名に記者5名まで。雑誌社は総計で5名などと、その場で実に的確な人数配分を決めたのです。もし、当初の取り決めのように、一社2名までという制限を杓子定規に守っていたら、反発され、会見も荒れ模様となったはず。
また、集まったすべての報道陣を無制限に入れていても、会見場は大混乱になっていたでしょう。弁護団の人数配分のとおりに入場すると、会見場はぴったり満席に。見事なさじ加減でした」(テレビ局スタッフ)
長時間に及んだ質疑応答の仕切りも巧みだった。
「質問はひとりふたつまでと言いながら、内容を瞬時に判断し、必要なときは3つ目の質問も許すなど、臨機応変ぶりが際立っていました」(前出・記者)
別の在阪メディア記者も苦笑交じりに語る。
「記者を指名する際、笑顔なんです。しかも、『そのメモ帳持っている人』『そのノートを振った人』などと、必ず手に何かを持った記者を指名する。そのうち、みんないろいろなものを持って手を挙げるようになって、なかにはノートPCを振っていた記者もいたほどです。会見の場を巧みに支配していたという印象です」
また、体調不良の小保方氏に万が一のことがあってはいけないと、別室に医師を待機させ、いつでもドクターストップをかけられるよう、会見場に“小保方カメラ”を独自に設置していたという。
この仕切り上手な弁護士、いったいどんな人?
「主任弁護士の三木秀夫弁護士です。2007年に食品偽装問題で叩かれた高級料亭『船場吉兆』の代理人を務め、昨年の阪急阪神ホテルズのメニュー虚偽表示問題でも調査委員を担当。人権派弁護士として有名な重鎮です。
また、理研への反論を担当したのは室谷和彦弁護士。こちらは特許や著作権など、知的財産問題のエキスパートとして知られています」(前出・記者)
つるし上げの場となってもおかしくなかった今回の会見。しかし、炎上することなく、小保方氏は「STAP細胞はある」ときっちり主張できた。その陰には、やり手弁護団のスゴ腕があったのだ。
(取材・撮影/ボールルーム)