イベリコ豚丼、出汁入り鶏がら醤油ラーメン、海老天うどん、骨付きチキン香味揚げ、海老とブロッコリーのタルタルサラダ……。最近、大手回転寿司チェーンのサイドメニュー競争が過熱している。
ひと口にサイドメニューといっても、ひと昔前の“子どもだまし感”はまったくなく、どれも良質な食材を使い、味にこだわった本格的メニューばかり。それにしてもなぜ、“本業”ではないサイドメニューにこれほど力を入れているのか? B級グルメ探究家の柳生九兵衛さんが説明する。
「回転寿司に限らず、魚を扱う飲食店はコストをかけて良質なネタを仕入れれば、うまい店にすることは簡単。でも、回転寿司は安価な部分が魅力です。そんな難しい条件下で、他チェーンとの差別化を図るため、サイドメニューに力を入れているのです」
現在、回転寿司の大手といわれるのは、売り上げ順に「スシロー」「かっぱ寿司」「無添くら寿司」「元気寿司」「はま寿司」の5チェーン。この業界3位のくら寿司が、今までの回転寿司にない常識破りのサイドメニューをいち早く投入し、チェーン間の競争が激しくなっていった。
しかし、サイドメニューで客を取り合うのは、寿司ネタで勝負するという点から見ると本末転倒な気もするが? その疑問に答えてくれたのは、回転寿司評論家の米川伸生さんだ。
「昔の回転寿司は、回転率重視のビジネスモデルでしたから、お客に長居される要因となるサイドメニューもアルコールも置かずにいました。ですが、今は方向転換し、家族だんらんしながらゆったりくつろいでもらって、リピーターになってもらえるようサイドメニューの種類、味ともに強化し、ある種の“ファミレス化”を図っている。それが功を奏し、ファミレスからお客が流れてきたので、近年はより一層サイドメニューに力を入れているという背景ですね」
現在の回転寿司チェーンの平均客単価はおよそ1100円で、4人家族ならば5000円程度の会計となるのが目安。
「同じ客単価でも、足が早い生鮮食材を使う寿司より、サイドメニューのほうが店側は儲(もう)かりますし、そもそも寿司だけで勝負するということが、逆にお客のニーズから離れてきている。サイドメニューの充実は必然的な結果といえるでしょう」(米川氏)
つまり今の回転寿司は、おいしいお寿司が食べられるファミレスというわけだ。もちろん、パッと食べてさっと帰る回転寿司本来の利用もできる。サイドメニューの充実は、客のニーズに応えた自然な流れだったのだ。
(取材/昌谷大介、牛嶋健[A4studio])
■週刊プレイボーイ17号「一度は食べておきたい! 回転寿司サイドメニュー選手権」より