梅雨真っ盛りで蒸し暑いこの季節、昆虫も活動的になる。もちろん、ゴキブリもその一種だ。多くの人に嫌悪感を与えるゴキブリだが、なんと“ぜんそく”の原因である可能性が指摘されているという。
「実は“ゴキブリぜんそく”というのがあるんです。これはゴキブリの糞(ふん)や体液、死骸の一部などを吸入してアレルギーを起こし、ぜんそくになる病気です」
そう語るのは、呼吸器疾患・アレルギー疾患・内科疾患に詳しい東京・池袋大谷クリニックの大谷義夫院長だ。
「これまで、アレルギー性のぜんそくといえば、ダニが中心だと思われてきました。しかし、アメリカの都市部では、ホコリの中にゴキブリアレルゲンが多量に含まれていることがわかり、ダニよりもゴキブリにアレルギーを示すぜんそく患者が多いことがわかって、ゴキブリぜんそくが社会問題化しているんです。日本のアレルギー専門医や呼吸器学会専門医の間でも、日本国内において今後、ゴキブリぜんそくが注目されると考えられています」
実際、すでに国内でも41歳の母親と11歳の女児、10歳の男児の家族でゴキブリぜんそくの報告があるという。
「この家族には、ダニやハウスダストのアレルギーはなかったため、最初はストレスや心因性によるぜんそくと考えられていました。しかし、入院して自宅から離れるだけで改善したので、ゴキブリアレルギーの血液検査をしてみたところ陽性でした。自宅を見てみると、あまり掃除がされていなくてゴキブリが多く、駆除して清潔な環境にしたら、この3名はぜんそくの再発もなくなったとのことです」(大谷氏)
では、今まで原因不明だったり、ダニやハウスダストのせいだと思われていたものも、少なからずゴキブリ由来だったのか?
「ちなみに、海外でのアレルギー患者のゴキブリ感作(かんさ)率(アレルギー陽性率)は、台湾で54.9%、アメリカのケンタッキー州で36.9%、インドでは35%という報告があります」(大谷氏)
こうした世界的な流れを受けてか、日本のアレルギー検査会社は、保険適用ができる33項目のセットを今年1月から36にし、その中にゴキブリを入れたほどだ。
夏に向け、ゴキブリが大増殖する時季。夏カゼが治らず、咳が止まらない…とか思って検査したら、その先にゴキブリぜんそくの陽性率が多数報告される事態になりかねない!
(取材・文/村上隆保)
■週刊プレイボーイ28号「アメリカで大流行中! ゴキブリぜんそく この夏、日本でも大ブレイク」より