晴れて世界遺産に昇格してから1年、さらに観光化が進み、今夏も登山客で混み合いそうな“日本の象徴”富士山。
だが、その一方で、本来の「活火山」の顔を取り戻そうとしている「前兆」が続々と報告されている。すでに優美な山体の下では30年以上前からマグマ活動を示す地震が頻発し、2011年3月に起きたM6.4の直下型地震で噴火再開への秒読み段階に入っているというのだ。
そこで、これまで富士山の異変を追い続けてきた本誌がつかんだ、ここ最近発生した気になる「前兆」を以下に列挙してみる。
●河口湖「六角堂」の水位異変 2013年3月、河口湖で水面が急激に低下。それまで舟で渡るしかなかった東南の湖面に浮かぶ景勝地「六角堂」へ、干上がった湖底を歩いて行けるようになった。さらにその後、今年4月から6月にかけての現地調査では河口湖東岸と西岸で湖畔水位に大きな差が生じており、なんらかの地殻変動が起きていることを裏付けている。
●「泉ヶ滝(いずみがたき)」の水枯れ 富士スバルライン5合目登山道付近の貴重な水場・泉ヶ滝では今春、いきなり岩盤から湧き出す豊富な水がピタリと止まった。2011年3月15日にM6.4の「静岡県東部地震」が発生してから水量が目に見えて減り始めたというが、近くにある「小御嶽神社」裏の駐車場にも長さ約10mの地割れが生じ、12年の前半にはそこから湯気らしきものが噴いた。この近辺で無数の亀裂が走り、水脈が断たれたのではないか?
進行する「大沢崩れ」、幻の池も消失?
●北東側「滝沢林道」の大崩壊 北東斜面の5合目へ通じる滝沢林道は、昨年3月に標高約1850~1900m地点のアスファルト路面が300mにわたって大規模崩壊・陥没。今年6月の調査でも周囲で亀裂や路肩の緩みを確認、樹木が10m以上の幅で帯状にへし折られ、路面が雪崩によって岩や砂礫で覆われた場所がいくつもあった。8合目以上の斜面地下に眠り続けてきた「凍土層」が融点温度を超えて一気に解け、大量流下したとも考えられる。
●急速に進行する「大沢崩れ」 山頂西側の頂上付近から山麓まで、優美な姿の富士山を真っぷたつに切り裂く巨大な溝「大沢崩れ」。その崩壊が急速に進行中。近くの「大沢駐車場」では今年3月14日、北西斜面で大規模な雪崩が発生、スバルライン5合目のレストハウスが膨大な雪と土砂・破砕樹木に直撃され破壊された。急斜面に積もった雪が山肌の地熱で短時間に解けて滑り落ちる「スラッシュ雪崩」と考えられており、地熱上昇による「万年雪」の融解が進行している。
●幻の湖「赤池」が消失 富士山北西麓「精進湖」の東側、青木ヶ原樹海の中に“7年に一度だけ現れる”といわれる「赤池」。2011年の秋には確認されたが、それ以後、姿を消した。山麓に膨大な量の雪解け水が満ちた今年、むしろ現れないことが不思議で、地元住民からは、「今年ほどの豪雪なら、いい加減に現れてもよさそうなのに」との声が上がっている。
2000年からは富士山の下に潜む「マグマだまり」で火山活動の強まりを示す火山性地震が頻発、2011年3月の「静岡県東部地震」が噴火に向けた準備態勢に決定的な拍車をかけたと考えられる。以降、北西斜面では異常隆起も進行しており、こうした現象を総合的に検証すると、「富士山の火山活動は間違いなく加速している!」と推測せざるをえないのだ。
(撮影/五十嵐和博)
■週刊プレイボーイ29号「検証!! 富士山噴火はどこまで迫っているのか!?」より