今年の7月から9月にかけて減量するチョコたち。おそらくパッと見では変化に気づかないだろうが……

この夏から、大手菓子メーカーがチョコレート菓子の一斉減量に踏み切る。

まず、明治が7月8日から計10商品の内容量を5~10%減らす。例えば、板チョコの定番品「ミルクチョコレート」は縦と横の長さが約1cmずつ短くなり、現行の55gから50gに軽くなる。売れ筋のロングセラー商品「アーモンドチョコ」はひと箱23粒から21粒に減らすなどして8g減量。同商品は9g減らした2012年4月に続く“再減量”となる。

森永製菓も8日から3ブランド14品を一斉減量。「チョコボール」のピーナッツが25gから24gに、キャラメルが29gから27gになり、1粒のサイズが微妙に小さくなるほか、「ダース」も粒数(12粒)はそのままに、3gほどダウンサイズされる。

ロッテは8月5日から人気の大袋3品を減量。「コアラのマーチ(12袋入)」が個数にして計12個、「トッポ(10袋入)」が計8本、「パイの実(18袋入)」が計6個少なくなる。9月2日には板チョコの「ガーナミルク」が55gから50gに小さくなる予定だ。

こうした減量の動きは今に始まったことではない。

例えば、明治の「マカダミア」は12年4月に10粒から9粒に、ネスレの「キットカットミニ」も07年中に17 枚入りから16枚、15枚と段階的に減り、今年3月には1枚のサイズが約6%小さくなった上で、とうとう14枚にまで減らされている。

ここ数年続いていた減量の動きが、今年7月に入って急加速しているのだ。今、チョコレート業界で何が起きているのだろう。

大手菓子メーカーも加盟する日本チョコレート・ココア協会の平野清巳氏がこう説明する。

「日本はチョコレートの主原料であるカカオ豆の全量を輸入に頼り、その約8割をガーナから調達していますが、カカオ豆の取引価格はここ数年高騰しており、現在の価格は昨年から5割高、一昨年から7~8割高の水準に達しています」

チョコの“2020年問題”とは?

その原因について、カカオ豆を中心に取り扱う食材輸入商社・立花商店のカカオトレーダーである生田渉(いくたわたる)氏がこう話す。

「これまで世界のカカオ豆の需要量と供給量は年間400万tでほぼ一致していましたが、中国やインドなどの新興国でチョコレートの需要が膨れ上がり、カカオ豆の供給が追いつかない状況になっています。英国に本部を置く国際ココア機関(ICCO)によれば、今年度にはカカオ豆の供給量が7.5万t不足するとのこと。今後もカカオ豆の高値水準は継続する可能性が高いので、国内メーカーが来年春をメドにもう一段、主力商品の減量に踏み切ってくる恐れもあります」

一方、供給側のカカオ豆生産国は、増産どころではない状況下にある。

「世界のカカオ生産量の5割以上を占めるコートジボワールとガーナのカカオ豆農家は、その大半が5ha以下の小作農。これまで日本を含めた先進国に1kg100円~200円台で安く買いたたかれてきました。これでは生活が成り立たないと、現地ではカカオ豆の畑を手放し、より高く売れる農産物に転作する農家が増えています」(生田氏)

そこで今、業界内で懸念されているのがチョコの“2020年問題”だ。生田氏がこう話す。

「このまま新興国のチョコ需要が拡大すれば、6年後にカカオ豆の供給が100万t不足するとICCOは予測しています。100万tというと、現在の総供給量の4分の1に相当しますから、世界的な“カカオ豆争奪戦”が苛烈になるのは必至。日本の大手菓子メーカーの調達量も激減する恐れがあります」

そうなれば、内容量の減量ラッシュが止まらないばかりか、人気チョコが続々と売り場から姿を消すことにもなりかねない。もはやこっそり“チョコ”っと減量すればいいという話ではないのだ。