ユニークな号泣っぷりで、一躍、時の人となった野々村竜太郎元兵庫県県議会議員(47歳)。その野々村氏が年に106回も日帰り出張していたというのが城崎温泉(同県豊岡市)だ。

とはいえ、出張目的や現地での活動状況などは一切不明。JRに支払った交通費を証明する領収書も一枚もない。今は券売機のタッチパネルに「領収書ボタン」がデカデカと表示され、誰でもたやすく領収書がゲットできる時代にも関わらずだ。

ところが野々村氏、例の会見の席でそのことを指摘されると、しどろもどろの口調で「初めて聞いた」とすっとぼけた。

それも無理はない。城崎温泉での野々村氏の目撃情報は皆無なのだ。JR城崎温泉駅の駅員さんが首をひねる。

「関西方面からの特急電車で降車するお客さんは一本当たり、せいぜい20名。年に100回も往復されているなら、記憶に残るはずなのですが……」

城崎温泉は駅も温泉街もこぢんまりとしている。タクシーの台数もそう多くない。そのタクシー運転手でさえも、こう話す。

「号泣議員? ないない。乗せたこともなければ、見たこともない。このへんで、あの人を見たという人なんておらんわ」

今回の一件で、にわかに城崎温泉がクローズアップされたことについて、城崎温泉観光協会の芹沢正志副会長は戸惑いを隠せない様子だ。

「あの号泣会見で、城崎温泉が全国的に注目されたことは認めます。日に2000、3000件だったホームページのアクセス数が一挙に3、4倍に増えましたから。ただ、だからといって、城崎温泉を訪れる観光客が増えたわけでもありません。むしろ、野々村氏と結びつけられることにより、クリーンな城崎温泉のイメージが損なわれはしないかと心配しています。あの号泣会見と城崎温泉は切り離して見てほしいですね」

ついでに婚活まで世話してくれる?

確かに、カラ出張先に利用された城崎温泉にとって、野々村氏はハタ迷惑な人だったのかもしれない。

しかし、城崎温泉の人々は心優しい。野々村氏を恨むこともなく、こうエールを送るのだ。

「行った、行ったとウソばかりついていないで、身辺が落ち着いたら、一度、ホントに城崎温泉に来ていただけたらと思っているんです。よいところがたくさんありますから」(芹沢副会長)

とはいえ、野々村氏はすでに県議を辞し、今はプータローの身だ。優雅に観光を楽しむ心の余裕はないかもしれない。

だが、心配することはない。こんな耳寄りなプランも聞こえてきた。

「現在、無職の野々村さんには、温泉街の旅館スタッフとして働くことをオススメします。実は昨年、元メジャーリーガーの野茂英雄さんが運営する『NOMOベースボールクラブ』が、(城崎温泉のある)豊岡市に本拠地を移してきました。選手たちは昼に練習し、夜は旅館スタッフとして働いています。旅館の仕事を通じて多くの出会いがあったようで、この1年、その選手たちが次々と結婚相手と巡り合っています。野々村さんもきっとよい伴侶が見つかるはず」(ある旅館スタッフ)

城崎温泉の人々がここまで親身に、「ホントに来い」コールをかけてくれているのだ。マジで一度、城崎温泉に訪ねてみることをオススメしておこう。

(取材/ボールルーム)

■週刊プレイボーイ31号「城崎温泉で『“号泣元県議”よ!一度はホントに来い』コール」より(本誌では、城崎温泉の地元民オススメ観光スポットも紹介!)