過去、週プレにも何度も登場している女性マンガ家・ろくでなし子氏が、7月14日、「わいせつ電磁的記録頒布」の容疑で警視庁に逮捕された。
彼女は自身の性器の型をとり、そこに石膏を流し込んで女性器の模型を制作し、それをデコレートしたアート作品「デコまん」で知られている。
逮捕容疑は、彼女のアート活動のひとつである「まんボート」(女性器の形を模して作るひとり乗りのボート)を制作するためにネット上で資金を集め、資金提供者に対して、3Dプリンタで立体に造形できる彼女自身の女性器のデータ(電磁的記録)を送った(頒布)ことが、法に触れるというものである。
ここで浮かぶのは、なぜろくでなし子氏が逮捕されなければいけないのか、という疑問だ。
というのも、女性器のみならず男性器にしても、リアルに作られたものは、世の中にたくさん存在する。それこそアダルトグッズショップに行けば、性器そのものといった精巧な商品もズラリと並ぶ。なのに、それらの商品は堂々と販売され続けている。
この点について、東京弁護士法律事務所の長谷川裕雅弁護士に聞いてみた。
「古い判例になりますが、1959年に女性の模造性器、つまり、女性性器の模型がわいせつ物であると認めた最高裁判決があります。ですから、今回のろくでなし子さんの件も模型そのものか、3Dプリンタに入力するデータなのかという違いはあるものの、類似事案と考えることができます。自慰行為に用いられるなど、わいせつ性が認定されやすい模型もあれば、医療用具のように用途などからわいせつ性が認定されにくい模型もある。今回の件がどう判断されるのかは、ろくでなし子さんの意図も関係してきます」
ろくでなし子氏逮捕は見せしめ?
となると、自らの作品について「性器は手足と一緒。わいせつ物だとは思わない」と主張するろくでなし子氏があっさりと逮捕される一方で、明らかに性的な用途に使われるアダルトグッズは黙認されていることは、ますます奇妙に思えてくる。
「これはスピード違反と考え方が一緒で、捕まった人の前を猛スピードのクルマが走っていても警察が捕まえないこともあります。つまり、捕まえないからといって、それが合法であると認定されているわけではないということです」(長谷川弁護士)
つまり、メディアに登場するなど目立っていたろくでなし子氏は、見せしめ的に逮捕された可能性もあるのだろうか。
都内のアダルトグッズショップ経営者にも意見を聞いてみた。このショップでは、女性器の内部を忠実に再現したオナホールも取り扱っている。
「基本的にわれわれが扱っている商品は“グレー”という位置づけです。というのも、商品はあくまで『ジョークグッズ』であって、パッケージにもそう表記している。
わいせつ物を販売しているわけではない。そういう理屈でやってきて、それを警察も黙認してきたのです。それこそ、お互いになあなあの部分がありましたね」
ただし、このアダルトグッズショップ経営者は「今回のろくでなし子さんの逮捕が、今後、われわれの業界にも影響を及ぼすかもしれません」と警戒する。
「何がわいせつ物なのか、という議論が盛り上がれば、われわれにも世間の目が向きますし、警察も今までと同じようには黙認してくれなくなるかもしれません。ただでさえ、業界内では、世界中から人が集まる2020年東京五輪に向けて締めつけが厳しくなりつつあるとささやかれていたのに」
(取材・文/頓所直人)