東日本大震災から3年半、再び巨大地震が迫ってきているといわれる。特にすぐそこにある危機とされているのが、房総半島東方沖と伊豆・小笠原沖を震源とするプレート境界型地震や首都直下地震。

いずれも、これまでにない未曾有(みぞう)の甚大な被害を引き起こすものだが、それが起こったら、すべてのライフラインがストップし、建物の倒壊や木造家屋の密集地帯を中心に大火災が発生する。

自衛隊の救援すらままならず、複合的被害は広がるばかり。そんなとき、首都圏の路上に溢(あふ)れ出る人々はどこに避難し、生活をしていけばいいのか? だが、どうやら「避難所生活」すらも確保できない可能性があるのだ。

まず、自治体の防災計画では「段階的避難」というシステムが想定されている。

地震直後は広い公園や河川敷など広域避難場所に避難して余震が収まるのを待つ。その後、自宅にいったん帰る。家が倒壊するなど住めない状態であれば、近くの学校などの指定避難所に移動するという2段階のものだ。

しかし、災害・危機管理アドバイザーの和田隆昌氏はこう指摘する。

「地震が起きて、自分がいる場所で安全が確保できると思ったら、無理に広域避難場所などに移動するのではなく、しばらくはそこにとどまったほうがいい。むやみに移動すると人の波に巻き込まれてしまい、自分の行きたい所に行けなくなります」

ただし、木造密集地域など火災が起こりやすい地域にいるときは、余計に素早く広域避難場所に避難したほうがいいだろう。

その後、いったんは広域避難場所などで過ごし、自宅までなんとかたどり着きたい。倒壊などを免れて生活できるようなら、避難所に行かず自宅で避難生活を送るのがベストだという。

というのも、首都直下地震では避難者の数が避難所の収容能力を大きく上回り、高齢者や小さな子供のいる家族が優先的に入所となるため、若者や独身者は後回しにされる可能性が高いからだ。

避難所生活も疲弊…自分の身は自分で守る!

だからといって、嘆く必要はない。実は避難所の生活は想像を絶するほど大変なものなのだ。

「狭い体育館に何百人、何千人という人が避難し、ギュウギュウ詰めの状態になります。実際、東日本大震災のときは定員600人のところに2000人が入った避難所がありました。避難所では消灯時間は決まっているし、子供の泣き声もする。自分の寝たい時間に寝ることはできません。睡眠不足は体力をどんどん消耗させます」(和田氏)

避難所では隣の人との仕切りはないので、プライバシーはない。物資の取り合いが起きたり、ストレスもたまるため、暴力沙汰も日常的に起きるようになるという。

一方で、東京特有のものとして、超高層マンションに住む「高層難民」の問題もある。

湾岸エリアなどを中心に高さ100mを超えるような超高層マンションが林立し、約9万6000世帯が暮らしているといわれる。こうしたマンションでは電気が復旧しない限りエレベーターが使えない。

せいぜい10階ぐらいの高さに住んでいるのであれば、物資の受け取りのために階段で地上と何往復かできるだろうが、20階、30階の高層階になると、かなり厳しい。地上にいったん下りたはいいが、部屋に戻れない。こんな「高層難民」が大量に発生するとみられているのだ。

それなのに、超高層マンションに住んでいる人は避難所の収容能力の想定には入っていないという。つまり、若者や独身者は避難所には確実に入れないと思ったほうがいいのだ。

人口が密集した首都圏では、災害に向けた整備が完璧でないのが現状。自分の身は自分で守るしかない。そのためにも、日ごろから知識を備え、あらゆる状況に対応できるようにしておく必要があるのだ。

(取材/西島博之)