長野・岐阜県境にそびえ立つ「御嶽山」(3067m)の噴火活動が続いている。

この活火山は1979年に水蒸気爆発、1991年と2007年にも小噴火を起こしたが、どれも活動は短期間で終息した。ところが今回は依然として大量の白煙を吐き出し、再爆発の危険性を示す地震も観測されているという。

また、噴火から一週間が経った10月4日時点で発見された死者は51人。正確な犠牲者数はいまだ不明だが、1991年「九州・雲仙普賢岳(うんぜんふげんだけ)噴火」の43人を上回り、88年前の「北海道・十勝岳(とかちだけ)噴火」の144人に次ぐ大規模火山災害になってしまった。

9月27日(土)11時52分の大噴火から約3時間後には、陸上自衛隊が山頂へ向かったものの、すぐに登山客たちの救出活動は中止された。この判断に対して当初は批判の声も上がったが、それもやむを得ない事情が現地取材で明らかになった。

噴火翌日の早朝から本誌は御嶽山取材を開始したが、最初に入った南側約6.5kmの山麓で早くも異変に出くわした。

その場所の頭上には火口からのびた白い雲状の噴煙が覆いかぶさっていたが、1時間ほど噴火を観察していると、急に目の前に紫色に輝くホタルのような幻覚が飛び交って見え、強い吐き気に襲われてしゃがみ込んでしまった。カメラマンも目の痛みと頭痛を訴える。

まずい、毒ガスか!?

これからの季節、ますます状況は困難に

大慌てで噴煙の流れから外れた東側5合目「おんたけスキー場」の救助活動拠点へ移動。すると、症状は消えていった。現地の陸自の現場整理担当官によると、

「残念ですが、本日(28日)はヘリ飛行以外の山頂部立ち入りは中止になるかもしれません。まだ詳しいことはわかりませんが、山頂には濃い有毒ガスが発生しているようです」

やはり! その有害な火山性ガスは硫化水素、二酸化硫黄、一酸化炭素などさまざまだが、取材中に遭遇したのは、火口部から谷筋沿いに下ってきた空気より重い有毒気体だったらしい。

そうなると気圧と酸素濃度が平地より数割低く、高山病になりやすい山頂部では火山性ガスを吸い込んだときのダメージは麓(ふもと)より大きくなるだろう。山頂部の犠牲者数を増やした一因はこれかもしれない。

現地取材後に防衛省「統合幕僚監部」に話を聞いた。

「とにかく今、未知の災害現場で非常に困難な救助・捜索活動が行なわれていることを理解してください。現地の救助は自衛隊だけでなく、警察、消防とともに編成されており、それぞれが装備したガス検出器などを使い、最前線の責任者たちが慎重に行動判断を下しています。遭難者の安否を気遣う遺族の方々のお気持ちは察するに余りありますが、2次被害の発生だけは絶対に避けたいと考えています」

自衛隊は5合目の前線基地へ戦車型装甲車5両を搬入した。突然の爆発再開で捜索隊が噴石の危険にさらされた場合に緊急出動するためだ。冬に入れば、噴火熱で降雪が急激に溶け出す2次災害「熱泥流」も発生しかねない。

今の時期、さらに追い打ちをかけるのが、次々と発生する大型台風の襲来だ。時間経過とともに、ますます捜索活動は難航しそうな気配を強めている。

(取材/有賀 訓)

■週刊プレイボーイ42号(10月6日発売)「御嶽山は富士山崩壊の導火線なのか?」より(本誌では、さらに今後の災害予測と影響を詳説!)