トレードマークともいえるサングラス姿で登場したToshl。会見中は終始表情を崩すことはなかった

1997年の解散から10年後、2007年に再結成し、11年にはワールドツアーを成功させたX JAPAN(以下、X)。90年代のビジュアル系ブームを牽引した彼らは11日、米ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでの公演を行なう。

しかし、ヴォーカルのToshlは再結成までの間に凄惨な状況に陥っていた。元妻をきっかけに自己啓発セミナー団体主催者のMASAYAに出会い、“洗脳”されてしまっていたことで波紋を呼んだ。

先月25日、ToshlはX JAPANの脱退や解散、そして自身が“洗脳”されていた間の出来事まで赤裸々に綴(つづ)った『洗脳 地獄の12年からの生還』の出版会見を行なった。その場所は、日本外国特派員協会。日本に駐在している外国人特派員やジャーナリストのほか海外特派員の経歴をもつ日本人を会員とした親睦団体が運営している。

「『ヴィジュアル系』という言葉を国内に広めた立役者」(日仏共同テレビ局FRANCE10記者)と評され、海外でも知名度のあるX JAPAN。場所も場所ということもあり、さぞや海外メディアが殺到するか? 海外メディアにToshlの告白がどう報じられるのか…と注目し行ってみた。

すると、会場にいたのはほとんどが日本人で、外国人記者はごくわずか。主催者にも確認したところ「今回はほとんど日本のメディアでしたね」とのことで、意外や拍子抜け。

それはともかく開始時刻となり、Toshlが登場。団体から離れて4年経っているものの、洗脳騒動のせいではないと思うほど顔は青白く、やや窶(やつ)れているように見えた。

会見が始まると、Toshlは、今でもMASAYAが名前を変えて活動しており、「若い人は不安になるものです。僕も相談する相手や真実を教えてくれる人がいれば落とし穴にはまらなかった。若い人には、道を踏み外さないようにしてもらいたい」と警告するために出版したと今作の経緯を説明。Toshlの言葉と交互に英語の通訳が入り、そういう意味ではある種、会場に物々しい雰囲気も。

今が一番、YOSHIKIとの歯車の合い方がいい

その後、始まった質疑応答では序盤に同席していた同協会関係者から「僕は日本語が読めないからこの本を読んでいないのですが、洗脳された経緯となぜ12年もここにいたのか説明してください」と、まさかのお願い! 前述のFRANCE10の記者によれば、かつてはヴィジュアル系が爆発的な人気を誇ったフランスでも、今はブームが終焉。X JAPANの再結成などは報道されたが、Toshlのスキャンダルなどはほとんど一般には伝わっていなかったそうだ。

そんな現状もあってか、ひと通り説明し終わってからも、続く質問はFRANCE10と日本のメディアばかり。会見が始まり50分経った頃、ようやく海外メディアや、なぜか参加していたテンプル大学の学生から「この経験はミュージシャンとしてのToshlにどんな影響を与えたか」という質問や、今後の音楽の方向性に関する問いが投げられたのみだった。

それに対して、Toshlは「歌はこの経験を形にするひとつの手段として表現者として伝えていきたい、それが自分の希望になっていくと思っている」「僕には『失われた10年」というものがありますけど、それが必要だったと考えています。今が一番、YOSHIKIとの歯車の合い方がいい。特に、彼は本気で人生を賭けて世界に挑戦しようとしている。そのようなパートナーと一緒にやっとチャンレンジができる。いろいろな意味で時が熟したのだろうと思っている」など前向きな回答。重々しい空気のなか、今後の活動に意欲を見せた。

1日には4年ぶりの国内公演を終え、往年のファンたちを感動させたX JAPAN。告白本の出版を区切りとして心機一転、新たな飛翔を期すToshlとともに再び海外で熱狂を巻き起こせるのか注目だ。

(取材・文・撮影/週プレNewS)